「兄が弟に払った1億5,800万円」はそのまま相続税の対象にならない?代償分割で税務署と相続人の主張が真っ向対立したワケ【税理士が解説】

「兄が弟に払った1億5,800万円」はそのまま相続税の対象にならない?代償分割で税務署と相続人の主張が真っ向対立したワケ【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産を中心に相続した相続人たちが現金を支払って調整する「代償分割」。では、その代償金は相続税の計算でも、そのまま使えばよいのでしょうか。今回、1億5,800万円ほどの代償金をめぐり、相続人と税務署の見解が対立しました。争点となったのは、小規模宅地等の特例を適用した後の価額を使った「代償金の計算方法」。国税不服審判所が示した判断から、代償分割の税務上の注意点を見ていきます。

なぜ代償金をそのまま使えないのか――「時点のズレ」という問題

なぜシンプルに「代償金=相続税の計算対象」ではダメなのか、その理由は、評価の「時点のズレ」にあります。

 

代償分割で決める代償金の額は、通常、遺産分割の話し合い時点での実勢価格に近い金額をもとに決められます。

 

一方、相続税の課税価格は、亡くなった時点の評価額を基準に計算するため、分割の話し合いに時間がかかる場合などには評価のズレが生ずることもあります。

 

さらに、相続財産の評価にあたっては評価額を切り下げる特例もありますので、実勢価格と相続税評価額は必ずしも一致せず、代償分割時の金額をそのまま相続税の計算に使うと、両者の税負担の公平性が崩れるおそれがあるのです。

相続税は「亡くなった時点」で計算

そこで、相続税基本通達では、代償金の額は原則として「相続開始時点の価額」に引き直して計算すべきとしたうえで、「相続人どうしが話し合って決めた合理的な方法」であればその計算を使い、話し合いによらない場合は通達の定める算式で機械的に計算するという2段構えとしています。

 

この事例では、「合理的と認められる方法」がどこまでの内容を指すのかについて正面から争われました。

 

次ページ小規模宅地等の特例で評価額が下がると、代償金も変わる?

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