「夏休みの間、そっちにいてもいい?」歓迎した息子一家
「最初は、孫と長く過ごせるなんてうれしいと思ったんです」
そう話すのは、70歳の正弘さん(仮名)です。妻の和美さん(69歳・仮名)と、郊外の戸建てで暮らしています。
夫婦の公的年金は合わせて月約30万円。預貯金などの金融資産は約3,600万円あります。住宅ローンはすでに完済しています。
長男の健太さん(42歳・仮名)は妻と、小学生の子ども2人との4人暮らし。実家までは車で3時間ほどかかるため、普段会えるのは年に数回でした。
その健太さんから連絡が来たのは、夏休み前のことです。
「今年、子どもたちの夏休みの間、そっちに長めにいてもいい?」
健太さんは在宅勤務が可能で、妻も仕事の予定を調整できるとのこと。滞在は3週間から1ヵ月ほどを考えているといいます。
和美さんは喜びました。
「もちろん。部屋も空いてるんだから」
夫婦だけでは使わなくなった子ども部屋もあります。
こうして夏休みに入ると、息子一家4人がやって来ました。最初の数日はにぎやかでした。朝から孫の声が聞こえ、6人で食卓を囲む。夕方には庭で遊び、週末には皆で外食しました。
ところが、1週間ほど経ったころ、和美さんはスーパーのレシートを見て驚きます。牛乳やジュース、肉、魚、果物、菓子。子どもが好きなものも用意するため、買い物の量は夫婦2人のときとはまったく違いました。
洗濯機を回す回数も増え、日中も複数の部屋でエアコンを使います。
「食費、かなり増えてない?」
和美さんが夫に聞くと、正弘さんも「まあ、6人だからな」と答えました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の消費支出は平均26万3,979円。このうち食料は29.9%、光熱・水道は8.9%を占めています。金額に換算すると、食料は約7万9,000円、光熱・水道は約2万3,500円です。夫婦2人の日常生活でも、両者だけで月10万円程度になります。
もちろん、4人が加われば単純に3倍になるわけではありません。それでも、食事の人数が2人から6人へ増え、それが数週間続けば、負担が大きくなるのは不自然ではありません。
正弘さん夫婦の場合、さらに増えたのが外食やレジャーの費用でした。週末に6人で出かけると、昼食代だけでもそれなりの金額になります。会計になると、いつものように正弘さんが財布を出しました。
数日の帰省なら、それでよかったのです。しかし2週目、3週目になっても同じでした。
ある夜、和美さんが夫に言いました。
「これ、食費も水道光熱費も、遊びに行くお金も、全部私たちが出すの?」
正弘さんも、返事に困りました。
