余命宣告後、急いで作成した「公正証書遺言」の内容
栃木県小山市に住むヨシコさん(仮名・80歳)は、一昨年の9月に夫のマサキさん(仮名・享年85)を見送りました。夫婦に子どもはおらず、遺産は自宅の土地・建物、田畑4筆、そして預貯金500万円でした。
マサキさんは生前、余命6ヵ月の宣告を受けた際に急いで公証役場へ相談に行き、公正証書遺言を作成していました。その内容は以下の3点です。
2. 田畑を弟・サトシさん(仮名)に「遺贈する」
3. 上記の遺言執行者を弟・サトシさんに指定する
しかし、マサキさんが亡くなる1ヵ月前、遺言執行者でもあった弟のサトシさんが急死してしまいます。そのころにはマサキさん自身の病状も悪化しており、遺言を再作成する余裕はありませんでした。
遺言執行者の急死によって生じた不備…80歳妻を襲った「2つの悲劇」
マサキさんの死後、少し落ち着いたころにヨシコさんが相続手続きを進めようとすると、思いもよらない事実が判明します。
財産を譲るはずだったサトシさんが先に亡くなったことで、「田畑を弟に遺贈する」という遺言部分は無効になるというのです。そのため、田畑の相続についてはヨシコさんを含め、夫の兄弟や甥・姪など合計8名全員で「遺産分割協議」を行わなければならなくなりました。
「公正証書遺言があるのにどうして……」
しかし、苦労はそれだけではありませんでした。ヨシコさんが自ら銀行へ赴き、マサキさんの預貯金を解約しようとしたところ、銀行の窓口で次のようなことを言われました。
「申し訳ございません、このままではお引き出し手続きができません。遺言執行者である弟様が亡くなっているため、家庭裁判所で新たな遺言執行者を選任してください」
裁判所で遺言執行者の選任申立を行い、専門家に手続きを依頼すれば約30万円もの費用がかかってしまうことがわかり、予想外の出来事にヨシコさんは唖然としてしまいました。
果たして、今回のような想定外の事態を防ぎ、遺された家族に無用な苦労をかけないためには、どのように遺言を作成しておくべきだったのでしょうか。
