「休みの日はいつも家のことをしていた」夫婦が手放した一軒家
「今週末、何する?」
妻の美智子さん(仮名・69歳)に聞かれ、夫の和夫さん(仮名・69歳)は「特にないな」と答えました。
「前の家だったら、何かしらやることがあったよね」
夫婦は現在、東京都内の都営住宅で暮らしています。年金収入は2人合わせて月約22万円です。
以前住んでいたのは、30代で購入した郊外の4LDKの一戸建て。2人の子どもを育て、住宅ローンも60代前半で完済しました。
子どもたちが独立してからも、そのまま夫婦で暮らしていましたが、家には常に何かしらの「やること」がありました。
春から夏は庭の草取り。秋には落ち葉を集め、台風が近づけば家の周囲を確認する。普段使わない2階の子ども部屋も、ときどき窓を開けて掃除します。
「一つひとつは大したことじゃないんですよ。草取りだって、やれば半日くらい。でも、それがずっと続くんです」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、現在の住居について「住まいが古くなり、いたんでいる」と感じる人は29.5%。「段差や階段等があり使いにくい」は12.7%、「家賃、税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」は15.5%でした。高齢期の住まいでは、費用だけでなく建物の状態や使いやすさも課題になります。
転機になったのは、和夫さんが庭木の剪定をしていたときです。脚立から降りたあと腰を伸ばしながら、「これ、75歳になってもやるのかな」と漏らしました。
美智子さんも以前から同じことを考えていました。
「私は2階の掃除が嫌になってた。誰も使っていないのに、家があるから掃除しているでしょう。何のためなんだろうって」
そこで夫婦は、家を売却して住み替えることを検討します。一般の中古マンションも見ましたが、管理費や修繕積立金を含めた毎月の住居費が気になりました。
そんななか、条件を調べたうえで申し込んだのが都営住宅でした。
都営住宅は、所得などの入居資格を満たせば必ず入居できる住宅ではなく、募集区分などに応じて申し込み、入居資格の審査を受ける必要があります。家賃についても一律ではなく、世帯の所得や住宅の立地・規模などに応じて決まります。
夫婦は募集への申し込みを経て、エレベーターのある2DKへの入居が決まりました。
4LDKから2DKへ。美智子さんは引っ越し前、「本当に狭くして大丈夫かな」と不安だったといいます。
