(※写真はイメージです/PIXTA)

十分な資産があれば、老後の不安はなくなるのでしょうか。施設に入る余裕がありながら、自宅介護を選んだ元経営者のAさん。そこには、介護費用よりも重く捉えていた「あるリスク」がありました。本記事ではFPオフィスツクル代表の内田英子氏が、Aさんの事例をもとに、老後の暮らしを支えるリスクマネジメントについて考えます。※本記事の事例は複数の相談をもとに、プライバシー保護のため脚色を加えています。税務・法務等の個別判断は各専門家にご相談ください。

元経営者夫婦が下した終の棲家の選択

70代のAさんは、長く事業を率いてきた元経営者です。親から事業を引き継ぎ、相応の資産を築いてきました。現在の資産額は7億円。望めば、設備の整った高級な老人ホームへの入居も、費用面では十分に選択肢に入ります。そんな状況にありながら、Aさんも妻も、少しずつ介護の手を必要としはじめていました。

 

お金の心配はいらないのだから、手厚いケアの受けられるところへ。家族の負担も軽くなるし、なにより安心だ。息子たちは当然のように、施設への入居を勧めます。しかし、Aさんが選んだのは、介護保険と公的医療を土台としながら、自費で家政婦や会員制の介護サービスを組み合わせ、住み慣れた家で暮らし続けるという道でした。

 

住み慣れた家を離れる不安もありました。ただ、理由はそれだけではありません。

 

Aさんが最も避けたかったのは、自分や妻の判断能力が低下したあとに、想定していなかった事態への対応を迫られること。「私は老いた自分を信じていないんです。過信していないというか」。

 

心身の状態や支援者の状況が変われば、サービスの変更や住み替え、新たな契約が必要になるかもしれません。そのとき、誰が、なにを基準に決めるのか。Aさんにとっての問題は、お金が足りるかどうかではなかったのです。

選択の背景にあった「リスクマネジメント」

Aさんが自宅での介護を選んだのは、長年の経営で培ってきたリスクマネジメントの発想から行き着いた結果でした。

 

計画を立てるとき、予定どおりに進む場合だけでなく、うまくいかなかったときの対応まで考えてきたAさん。老後の暮らしについても同様に考えたのです。

 

特に重く考えたのが、「住み替え」の判断でした。施設に入居した場合、入居時点の契約と施設側の運営方針が、その後の暮らしの前提になります。心身の状態が変わり、その施設の対応範囲を超えれば、退去や転居、つまり「住み替え」の判断が必要になる可能性があります。そのときに本人の判断能力は低下しているかもしれません。Aさんは、この点の不確実性を避けるために、住む場所を固定できる在宅介護を選びました。

 

「自宅を軸に支援者や契約を配置しておけば、状態が変わっても、家を起点にサービスを足し引きすればいいですから」

 

Aさんにとって在宅介護は、想定外が起きたときにも、できる限り自分たちの意向に沿って対応しやすくするための選択でした。

次ページ老人ホームが続々倒産

※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録