年金月8万円でも「もう心配ない」息子宅で始めた新生活
「これで老後は安心だと思いました。もう一人で何とかしなくていいんだって」
和子さん(仮名・85歳)は、1年前に始めた息子一家との生活を振り返ります。
夫とは20年以上前に死別。長く一人で暮らし、年金は月約8万円です。家賃の安い賃貸住宅に住み、貯蓄は約80万円。ぜいたくはできませんが、食費を抑えながら何とか生活していました。
転機は、自宅で転倒したことでした。
大きなけがには至らなかったものの、床からなかなか起き上がれず、近所の知人に助けを求めました。その話を聞いた59歳の一人息子・浩一さん(仮名)が、「もう一人は危ないんじゃないか」と心配するようになりました。
浩一さんは妻と2人で、車で1時間ほどの場所にある戸建てに暮らしています。子どもはすでに独立しており、空いている部屋もありました。
「うちに来ればいいよ。家賃も払わなくて済むし、そのほうがお互い安心だから」
和子さんにとっては願ってもない申し出でした。
家具の多くを処分し、長年暮らした部屋を退去。引っ越し代などは息子が負担してくれました。食費と光熱費として毎月3万円を渡し、残った年金は衣類や医療費などに使うことにしました。
総務省『令和6年全国家計構造調査』によると、75歳以上の高齢者無職単身世帯では、1ヵ月の実収入は平均15万5,129円、消費支出は13万8,285円となっています。和子さんの年金月8万円は、この平均的な実収入を大きく下回る水準です。
最初の数ヵ月、生活は順調でした。
夕食は3人で食べ、病院へ行く日は浩一さんが車を出してくれます。和子さんも洗濯物を畳んだり、できる範囲で家事を手伝ったりしました。
「息子たちには迷惑をかけたくないと思っていました。自分のことはできるだけ自分でするつもりでした」
しかし、半年ほどたったころから状況が変わり始めます。
和子さんは以前より足腰が弱くなり、入浴や階段の上り下りにも不安を感じるようになりました。夜中に体調が悪くなり、息子夫婦を起こすこともありました。
