消費税率引き上げが抱える政治的な壁
日本では、消費税率の引き上げは長年にわたり政治的に難しい課題となってきました。
1980年代には、大平内閣による一般消費税構想、中曽根内閣の売上税構想がいずれも実現せず、その後、竹下内閣によって消費税が導入されました。しかし、1997年に橋本内閣が税率を5%へ引き上げたあとには景気低迷も重なり、「消費税を上げると選挙に負ける」という政治的なイメージが定着しました。
今回の食料品減税も、仮に2年間の時限措置が終了し、税率を8%へ戻す段階になれば、再び減税継続を求める声が強まる可能性があります。一度引き下げた税率を元に戻すことは、制度設計以上に政治的なハードルが高いことを忘れてはなりません。
社会保障を支える消費税と「骨太の方針」
政府は毎年、「骨太の方針」を掲げ、経済財政運営の方向性を示しています。しかし、現在の消費税をめぐる議論を見る限り、その内容は目先の制度設計や実施時期に重点が置かれ、中長期的な税制のあり方についての議論は十分とはいえません。
日本では少子高齢化の進展に伴い、年金、医療、介護などの社会保障給付費は今後も増加していくことが見込まれています。一方で、生産年齢人口は減少を続けており、所得税や法人税だけで必要な財源を確保することは容易ではありません。そのため、消費税は景気変動の影響を比較的受けにくく、広く国民全体で負担を分かち合うことができる税として、今後も社会保障を支える基幹税であり続けると考えられます。
だからこそ、消費税を一時的な物価高対策や選挙公約の材料として議論するだけではなく、日本の税制全体のなかでどのような役割を担わせるのかという長期的な視点が必要です。
2026年5月には、OECDのマティアス・コーマン事務総長が、日本の消費税率について、時間をかけて段階的に18%程度まで引き上げることを検討すべきだとの考えを示しました。この発言に対しては、OECDに財務省出身者が多いことなどを理由にさまざまな受け止め方がありますが、日本の厳しい財政事情や欧州各国のVAT税率を踏まえれば、決して非現実的な提案とはいえません。
外部の国際機関からは、日本に対して消費税率の引き上げを促す意見が以前から示されています。一方、日本の政界では、消費税率の引き上げは選挙で不利になるという「政治的トラウマ」が根強く残っています。その結果、将来の税制の姿を正面から議論することが難しくなっている面は否定できません。
政府には選挙ごとの公約に左右される短期的な政策ではなく、将来どの程度の税率を目指すのか、軽減税率をどのように位置づけるのか、給付付き税額控除をどのように組み合わせるのかといった中長期的な税制の方向性を国民に示す責任があります。
