「結婚したら家を買う」「30代までにマイホームを」――かつて日本のサラリーマンにとって“普通の幸せ”とされていた人生設計が、東京で急速に過去のものとなりつつあります。資材価格の高騰や円安、さらには海外マネーや高所得層の流入によって、都内の新築マンション平均価格は1億円を突破。いまや世帯年収1,000万円を超える世帯であっても、都心で理想の住まいを手に入れることは極めて困難です。親世代が当然のように手に入れてきた「庭付き戸建て」や「職住近接」を妥協せざるを得ない現実の背景には、一体なにがあるのでしょうか。住宅市場の変容を紐解きながら、30代世帯のリアルな葛藤と彼らの今後の選択肢を探っていきます。

「妥協は避けられない」待っていたのは現実

自分たちの「完全な理想」を突き詰めれば、職場への通勤にも遊びに行くのにもアクセスがよくて便利な中目黒駅近くにある庭付き戸建ての4LDK。しかし、ネットで相場を調べてみると、その条件での価格は1億5,000万〜3億円と、とても手が出せる金額ではありませんでした。

 

「さすがに中目黒で、とまではいわないけれど、せめていま住んでいるエリアでマイホームを……」

 

そう自分たちなりの理想を引き下げて探してみたものの、待っていたのはなおも「思い描く暮らしとはほど遠い現実」だったといいます。

 

「周辺環境や通勤のしやすさ、生活の利便性などがわかっている現在のエリアを調べましたが、『やはり高いな』と感じました。検討していた住宅の価格帯は6,000万円程度で、月々の返済額は上限17万円を考えていました。ネットで調べ、予算内でも生活に支障がなく、手元に娯楽費などのゆとり資金を残しつつ通勤圏内に住める選択肢があることはわかりましたが、都心からさらに離れる必要があるなど妥協は避けられないと痛感しました」

 

甲斐さん自身の実家と比較しても思わずため息が出ます。関西の実家なら、中心部までのアクセスは30分程度。ですが東京では、同じ物件価格だと都心まで1時間はかかる場所しか選べません。

 

マイホームについてお話を聞いた、甲斐さん(仮名)。「将来的に子どもは二人、犬も飼いたい」と将来設計を話す。
マイホームについてお話を聞いた、甲斐さん(仮名)。「将来的に子どもは二人、犬も飼いたい」と将来設計を話す。
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