「ハハッ、老後の夢は、散りました……。」〈年収650万円〉〈小遣い月3万円〉〈昼飯はふりかけおにぎり2個〉64歳倹約夫、“苦行のサラリーマン生活終了”まで残り1年…どんでん返しの「妻の一言」【FPが解説】

「ハハッ、老後の夢は、散りました……。」〈年収650万円〉〈小遣い月3万円〉〈昼飯はふりかけおにぎり2個〉64歳倹約夫、“苦行のサラリーマン生活終了”まで残り1年…どんでん返しの「妻の一言」【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金として十分な資産を形成できたとしても、それを「誰と、どのように使うのか」という前提が崩れてしまえば、ライフプラン全体を見直す必要が生じます。夫婦それぞれの生き方や世帯のあり方が変化した際、家計や資産の扱いにどのような影響がおよぶのか。本記事では、Aさんの事例とともに、老後のマネー・ライフプランについて、波多FP事務所の波多勇気氏が解説します。※紹介する事例は、相談者より許可を得て、プライバシー保護の観点から相談者の個人情報および相談内容を一部変更して記事化しています。

定年後を楽しみに倹約を続けた64歳夫

Aさんから老後について相談を受けた際、最初に出てきたのは、お金の不安ではありませんでした。

 

「あと1年なんですよ。もう十分働いたかなって思っています」

 

Aさんは65歳を区切りに仕事を辞める予定でした。

 

「朝、時間を気にせず起きて、妻と出かけたり、平日に旅行したり。そんな生活をしてみたいんですよね」

 

仕事を始めてから、生活の中心はずっと会社でした。現在の年収は650万円。家計の管理は奥様に任せ、自分は月3万円と決められた小遣いの範囲で生活してきたといいます。

 

「僕はあまり使わないですよ。昼飯も妻にふりかけおにぎりを2個握ってもらって安く済ませてきましたし、欲しいものがあっても、本当に必要か考えてから買います」

 

なぜ、そこまで倹約を続けられたのでしょうか。Aさんの答えはシンプルでした。

 

「いま使わなくても、定年したら時間がありますから。そのとき妻と楽しめばいいと思っていたんです」

 

老後のために、いまは我慢する。Aさんにとって、それは家族のためでもあり、自分自身の将来のためでもありました。そこで、具体的な老後設計を考える前に、一つ確認しました。

 

「奥様は、定年後の生活についてどのように考えていらっしゃいますか?」

 

Aさんは少し考えたあと、「どうですかね。でも、まあ同じような感じじゃないですか」と答えました。これまで夫婦で、定年後の暮らしについて具体的に話したことはほとんどなかったそうです。

妻が思い描くセカンドライフ

次にAさんが相談に訪れたとき、前回とは明らかに様子が違っていました。

 

「この前、妻と老後について話してみたんですよ」

 

Aさんはしばらく黙り込んだあと、小さく笑いながらいいました。

 

「ハハッ、老後の夢は、散りました……」

 

Aさんが妻に、「仕事を辞めたら、2人でゆっくり旅行でもしたいな」と話したところ、妻はしばらく沈黙し、思いもよらない言葉を返したといいます。

 

「私は、あなたとは違う老後を考えてる」

 

Aさんは最初、その意味がよくわかりませんでした。話を聞くと、妻は、Aさんの定年後も夫婦で常に行動をともにする生活を望んでいるわけではなかったようです。

 

これまで家庭を中心に過ごしてきたぶん、これからは自分自身の時間を大切にしたい。場合によっては、別々に暮らすことも考えている。――そんな思いを以前から抱えていたというのです。

 

Aさんにとっては寝耳に水でした。「仲が悪いと思ったことはなかったんですよ」。そして、こんな言葉が続きました。

 

「僕は妻と老後を楽しむために、ずっとお金を使わないようにしてきたつもりだったんですけどね」

 

もちろん、Aさんが倹約してきたことと、妻が望む老後は別の問題です。家族のためと思ってしたことでも、相手が同じ未来を思い描いているとは限りません。

 

「でも、妻から『そうしてほしい』といわれて節約していたわけじゃないですからね」。Aさんは、寂しそうにそう話しました。

次ページ老後資金を考えるうえで「いくら貯めればよいのか」よりも大切なこと

※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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