「結婚したら家を買う」「30代までにマイホームを」――かつて日本のサラリーマンにとって“普通の幸せ”とされていた人生設計が、東京で急速に過去のものとなりつつあります。資材価格の高騰や円安、さらには海外マネーや高所得層の流入によって、都内の新築マンション平均価格は1億円を突破。いまや世帯年収1,000万円を超える世帯であっても、都心で理想の住まいを手に入れることは極めて困難です。親世代が当然のように手に入れてきた「庭付き戸建て」や「職住近接」を妥協せざるを得ない現実の背景には、一体なにがあるのでしょうか。住宅市場の変容を紐解きながら、30代世帯のリアルな葛藤と彼らの今後の選択肢を探っていきます。

夫婦で「戸建て派」描いた理想の生活

「もっと駅から離れるしかないのか……」

 

ネットでマイホームを購入するための下調べをしていた甲斐さん(仮名/33歳)は、思わずそうつぶやきました。関西出身で現在、東京都足立区の家賃15万円の1LDKに夫婦2人で住む甲斐さんは、賃貸住宅の更新を機に、都心でのマイホーム購入を検討した一人です。

 

甲斐さんは広告代理店勤務の年収680万円、手取りは月44万円程度。妻は事務職で年収350万円、手取りは月24万円程度で世帯年収は1,030万円です。家賃の割合は22%程度で、毎月15万円以上をNISAや将来の貯金に回しています。

 

子どもは2人が理想で、余裕があれば犬も飼いたいと考えている甲斐さん夫婦。子どもの将来を考えると、大学の選択肢が多く、賃金も高い“東京”に住むことはマイホーム購入の必須条件でした。甲斐さんは「できれば戸建て派」、妻は当初「断固戸建て派」でしたが、現実を直視し、夫婦で理想をすり合わせた結果、いまはマンションでもいいと意見は一致しています。

次ページ中目黒駅近くにある庭付き4LDK戸建ての価格に愕然

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