「今月だけ助けて」から始まった長男への援助
「母さん、今月だけ3万円貸してもらえない?」
長男の浩平さん(仮名・38歳)から電話があったのは、3年ほど前のことでした。
母の久美子さん(仮名・70歳)は夫を7年前に亡くし、一人暮らしをしています。年金は月約17万円、預貯金は約1,100万円。住宅ローンを完済したマンションに住んでいました。
浩平さんは会社員でしたが、転職後に収入が下がり、家賃やクレジットカードの支払いが重なったといいます。
「次の給料が入ったら返すから」
久美子さんはすぐに3万円を振り込みました。
しかし翌月にも「車の修理代が足りない」、その次には「友人の結婚式が重なった」と連絡がありました。最初の半年だけで、振り込んだ金額は20万円を超えました。
浩平さんには月30万円ほどの収入がありましたが、外食や趣味にもお金を使っていました。久美子さんが「少し節約したら」と言うと、「仕事の付き合いもあるから」と返されます。
それでも援助を断れませんでした。
「困っているのに放っておくのもかわいそうだと思ったんです。私も一人ですし、すぐに使う予定のない貯金なら少しくらい、と考えていました」
いつの間にか、浩平さんからの連絡は「貸してほしい」から「今月もお願い」に変わっていきました。
毎月決まった額ではありませんが、平均すると月4万~5万円。誕生日や年末には別途お金を渡すこともあり、3年間で援助した総額は150万円近くになっていました。
一方、久美子さん自身の支出も増えていました。
マンションの管理費と修繕積立金は値上がりし、通院する回数も以前より増えました。冷蔵庫の買い替えが必要になったときには、10万円を超える出費をためらい、安い機種を選びました。
総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が月11万8,465円、消費支出は14万8,445円。年金額が平均より多くても、住居費や医療費、家電の買い替えなどが重なれば、預貯金を取り崩す場面は珍しくありません。
久美子さんが長男への援助を見直したのは、自宅の給湯器が故障したことがきっかけでした。交換費用の見積もりは約25万円。通帳を確認すると、夫が亡くなった直後には1,400万円ほどあった預金が、1,100万円程度まで減っています。
もちろん、すべてが息子への援助によるものではありません。ただ、この先も同じペースでお金を渡し続ければ、自分の老後資金が確実に減っていくことを初めて実感しました。
