「こんなに買って…」半年ぶりの実家で息子が見つけたもの
芳子さん(仮名・82歳)は、夫を8年前に亡くしてから一人暮らしです。
住まいは、夫と子どもたちと長く暮らしてきた一戸建て。住宅ローンはすでになく、月約15万円の年金で生活しています。
54歳の長男・健司さんは新幹線で2時間ほど離れた場所に住んでおり、普段は電話で母親の様子を確認していました。
「元気にしてる?」
そう聞けば、芳子さんはいつも「元気よ。買い物も自分で行ってるし、何も心配いらない」と答えます。電話で話す限り、以前と大きく変わった様子はありませんでした。
ところが、半年ぶりに帰省した日のことです。健司さんが台所へ行くと、床の隅にティッシュペーパーやキッチンペーパー、飲料水などが積まれていました。
「母さん、ずいぶん買ったね」
そう声をかけると、芳子さんは「安いときに買っておいたの」と笑います。
しかし、洗面所の収納を開けると、未開封の洗剤が何本も並んでいました。浴室にはシャンプーの詰め替えが複数あり、台所の棚からも同じ種類の乾麺や缶詰が出てきます。
「母さん、同じものがいくつもあるよ。これ全部使うの?」
「そのうち使うわよ。腐るものじゃないんだから」
芳子さんはそう答えました。健司さんが気になったのは、単に物が多いことではありません。
以前の母親は、買い置きはするものの「洗剤はあと1本」「お米は来週買う」など、家にあるものをよく把握していたからです。
そこで「この洗剤、この前買ったの覚えてる?」と聞いてみると、芳子さんは少し考えてから、「あら、そうだった?」と首をかしげました。
「そこで初めて、荷物が多いことより、同じものを何度も買っていることが気になったんです」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上で「自分で食品・日用品の買物をしている」と答えた人は75.5%でした。高齢になっても自分で買い物を続けている人は多くいます。
一方、同調査では現在の住まいについて「住まいが古くなり、いたんでいる」と感じる人が29.5%、「段差や階段等があり使いにくい」は12.7%でした。年齢を重ねるなかでは、本人の状態だけでなく、長く暮らしてきた住環境も含めて生活を見直す必要が出てきます。
