専任条項もテール条項も、それ自体が悪いわけではない
ここで誤解してはいけないのは、専任条項やテール条項そのものが、すべて問題だというわけではないことである。
専任条項には、情報管理を一本化し、買い手候補との交渉を効率的に進める役割がある。
テール条項には、仲介会社が紹介した相手との直接取引によって報酬を回避されることを防ぐ役割がある。
いずれも、M&A支援を適切に進めるために必要となる場合がある。
一方で、契約期間が長すぎる、解約が難しい、専任の範囲が広すぎる、テール期間が過度に長い、対象企業が明確でない、といった契約であれば、売り手の選択肢を必要以上に狭めることになる。
問題は、条項の存在そのものよりも、経営者が内容を十分に理解しないまま契約してしまうことにある。
仲介契約前に確認したいポイント
M&A仲介契約を締結する際には、少なくとも次の点を確認しておきたい。
●専任契約か、非専任契約か
●他の仲介会社や金融機関、顧問税理士への相談は可能か
●自ら見つけた買い手候補も仲介会社を通す必要があるか
●契約期間は何カ月か
●契約は自動更新されるか
●中途解約は可能か
●解約の申し出は何日前までに必要か
●テール期間は何年間か
●テール条項の対象となる企業の範囲はどこまでか
●契約終了時に対象企業のリストが交付されるか
●成功報酬以外に、着手金や月額報酬、中間金が発生するか
経営者にとってM&Aは、一生に一度経験するかどうかの大きな決断である。一方、仲介会社にとっては日常的に取り扱う契約だ。
知識や経験に差があるからこそ、「大手だから安心だろう」「担当者を信用しているから大丈夫だろう」と考えるのではなく、契約書の内容を一つひとつ確認する必要がある。
署名する前に理解することが、経営者自身と会社、そして従業員を守る第一歩となる。
不安がある場合には、できれば顧問弁護士に相談してほしいが、弁護士がいないケースもあるだろう。公的支援機関である事業承継引継ぎ支援センターや、M&A支援をしている税理士などの士業に相談することもおすすめする。
また、トラブル例に学ぶことも重要である。中小企業庁が仲介会社とのトラブル例や対処方法をまとめた「M&Aガイドライン」も是非とも参考にされたい。
※ 本文の記事は実例を基に記載していますが、守秘義務の観点からエリアや個人名などは適宜変更しています。
都 鍾洵
税理士
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