そんな契約、まかり通るのか!?…製造会社の高齢社長、従業員を守るため必死の思いで「M&A仲介契約」も、後日理解した「文面の恐ろしい内容」【税理士が解説】

そんな契約、まかり通るのか!?…製造会社の高齢社長、従業員を守るため必死の思いで「M&A仲介契約」も、後日理解した「文面の恐ろしい内容」【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

創業から40年、地道な経営が評価されてきた船舶部品製造会社。しかし、社長は高齢となり、後継者も見つからないことから、M&Aを決意。担当者は自信満々だったものの売却話は進まず、しびれを切らせた社長が動こうとしたその時、まさかの事態が発覚…。税理士の都鍾洵(みやこ しょうじゅん)氏が、事例をもとにM&Aの厳しい実情について警告・解説する。

他社へ依頼できない「専任条項」

M&A仲介契約には、「専任条項」が設けられていることが多い。

 

専任条項とは、契約期間中、売り手が他のM&A仲介会社や支援機関へ重ねて依頼することを制限する条項である。不動産仲介でいう専任媒介契約に近いイメージを持つとわかりやすい。

 

仲介会社側から見れば、専任契約には合理性がある。M&Aでは、買い手候補の探索、企業概要書の作成、資料の整理、面談調整、条件交渉などに多くの時間と費用がかかる。

 

複数の仲介会社が同時に同じ会社を市場へ紹介すれば、情報管理が難しくなり、買い手側に混乱を与える可能性もある。

 

同じ会社の案件が、異なる価格や条件で複数の仲介会社から持ち込まれれば、「この会社は相当売り急いでいるのではないか」と思われるおそれもある。

 

したがって、専任条項そのものが直ちに不合理というわけではない。

 

しかし、売り手にとっては大きな制約となる。

 

仲介会社の動きが鈍くなったとしても、契約期間中は他社へ依頼できない。

 

自分で見つけた買い手候補と交渉する場合にも、契約内容によっては仲介会社を通す必要がある。

 

契約期間が自動更新される内容であれば、解約の申し出をしない限り、専任状態が続くこともある。

 

熊田社長の契約書にも、他の仲介会社へ依頼してはならない旨が記載されていた。

 

しかも契約期間は1年間で、期間満了の一定期間前までに解約を申し出なければ、自動的に更新される内容だった。

 

熊田社長は、その点を十分に理解していなかった。

 

「契約中だから、他社には頼めない。では、今の会社との契約を解約すればいいのか…」

 

そう考えた熊田社長だったが、問題はそれだけではなかった。

次ページ仲介契約終了後も影響が残る、あの条項

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