「今月は少し贅沢ができる」65歳の誕生日に年金用通帳を記帳した元会社員の大誤算…28万円受け取れるはずが、“振込額ゼロ”。未開封の郵便物に紛れていた〈緑色の封筒〉の正体【FPが解説】

「今月は少し贅沢ができる」65歳の誕生日に年金用通帳を記帳した元会社員の大誤算…28万円受け取れるはずが、“振込額ゼロ”。未開封の郵便物に紛れていた〈緑色の封筒〉の正体【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

ねんきん定期便、年金請求書、年金振込通知書、公的年金等の源泉徴収票……。65歳が近づくと、年金に関する重要書類が次々と届きます。なかには返送や手続きが必要なものもありますが、つい後回しにして見落としてしまうことも。しかし、必要な手続きをしないままでいると、大きなトラブルにつながりかねません。本記事では、波多FP事務所の波多勇気氏が、田中洋子さん(仮名)の事例から、年金機構から届く「緑色の封筒」の意味と適切な手続きについて解説します。※紹介する事例は、相談者より許可を得て、プライバシー保護の観点から相談者の個人情報および相談内容を一部変更して記事化しています。

28万円は“2ヵ月分”…年金振込の落とし穴

「洋子さん、もう一つ整理しておきたいことがあります。年金が予定どおり入ったとして、その金額でその後の生活に問題ないか、チェックしませんか」

 

そういうと洋子さんは、口ごもりながらいいます。「28万円入れば、なんとかなると思っていたんですが」。

 

「いままで年金が入った翌月に、少し不安になることはありませんでしたか」。筆者がそう聞くと、洋子さんは苦笑いしました。

 

「あります。今月は大丈夫と思って使ったら、次の月に病院代や電気代が重なって、結局貯金から出すことがありました」

 

年金は、支払額がそのまま自由に使えるお金とは限りません。介護保険料や住民税、所得税などが差し引かれるほか、年金は原則として2ヵ月分がまとめて振り込まれます。通帳にまとまった金額が入ると、その月は余裕があるように思えますが、翌月は年金の入金がないのです。

 

この点、洋子さんは通帳に入った金額をその月の収入として捉えていたようです。

 

そこで、筆者は洋子さんと、年金が入った月に安心しすぎない仕組みをつくることにしました。2ヵ月分の年金が入ったら、半分は翌月分として残す。固定資産税や火災保険、医療費が増えた月に備える分は、生活費とは別に置いておく。医療費の領収書や生命保険料控除証明書は、年末に慌てないよう1つのファイルにまとめる。それだけでも、残高の減り方は変わります。

 

また、これを機に生命保険についても、保障内容と保険料を一覧にしました。年金生活に入る以上、保険で備える部分と、預貯金で対応できる部分をわけて考える必要があったからです。

 

一連の見直しを終え、洋子さんは言いました。

 

「私、年金が増えることばかり考えていました。増えた分をどう使うかまでは考えていなかった」

「緑色の封筒」未提出で、年金支給は後ろ倒しに

FP相談のあと、洋子さんは娘と一緒に年金事務所へ行きました。事前に整理した書類を持参し窓口で確認した結果、やはり65歳時の年金請求書が未提出のままでした。

 

洋子さんは必要事項を記入し、本人確認書類や通帳の写しなど、案内された書類を添えて提出。期限は過ぎていましたが、必要な手続きを行えば、65歳誕生月にさかのぼって支払われるそうです。

 

ただし、すぐに振り込まれるわけではありません。年金証書や年金決定通知書が届き、その後に支払いが始まるまで、一定の期間がかかります。固定資産税の支払いや医療費、夏場の電気代、孫への入学祝いなど、28万円ありきで組んでいた支払い予定は、いったん見直すことになりました。

 

帰宅後、洋子さんから連絡がありました。

 

「無事振り込まれることになって本当に安心しました。でも、もっと早く封筒を開けていればよかったです」

65歳は「お金の管理の仕方」を見直す絶好のタイミング

65歳は、年金の種類が変わる節目です。同時に、その後の家計を自分自身で管理するための節目でもあります。

 

会社員時代は、保険料は給与から天引きされるため、手続きの多くも会社経由で進むでしょう。しかし、年金を本格的に受け取る段階になると、自分で確認し、自分で請求し、自分で書類を管理する場面が増えます。

 

年金は、通帳に振り込まれて終わりではありません。年金からなにが差し引かれるのか。住民税や介護保険料はいつ、いくら変わるのか。医療費や保険料は、年金収入の範囲内で払い続けられるのか。年に数回のまとまった支払いへの備えはどうするか……。ここまで確認して初めて、「今月は少し贅沢ができるかどうか」が判断できます。

 

老後の安心をつくるためにも、届いた書類は一つひとつ確認し、必要に応じて周囲に相談しながら、適切な手続きを進めることが重要です。

 

 

波多 勇気

波多FP事務所 代表

ファイナンシャルプランナー

 

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