未開封の郵便物に紛れていた「緑色の封筒」
洋子さんから一連の話を聞いた筆者はまず、振込がない原因を探ることにしました。
そもそも、年金の振込額が変わる理由は、下記のようにいくつかあります。
・所得税や復興特別所得税、住民税、介護保険料などが差し引かれて手取りが減る場合
・働きながら年金を受け取ることで、老齢厚生年金の一部が支給停止になる場合
・加給年金や振替加算など、家族構成に関係する加算が変わる場合
・年金生活者支援給付金の対象から外れる場合
しかし、洋子さんの給与収入は大きく変わっておらず、65歳を機に仕事を増やしたわけではありません。税金や社会保険料の控除だけで、見込んでいた約28万円の振込が丸ごとなくなるとは考えにくい状況でした。
そこで筆者は、“ある可能性”に着目しました。「田中さん、65歳になる前後に、年金機構から年金請求書は届いていませんか」。
洋子さんは頷き、何通もの書類を机の上に広げました。
「すみません。どれが大事なのかわからなくて」
ねんきん定期便、年金振込通知書、年金額改定通知書、公的年金等の源泉徴収票、介護保険料の通知、住民税の通知、固定資産税の納税通知書、医療保険の保険証券……。なかには、まだ開封していない封筒も混ざっています。
そのなかに、緑色の封筒が。差出人は日本年金機構で、表面には年金請求書に関する記載があります。
「これも開けていないんですか」「はい。年金受給はもう始まっていたので、ただのお知らせかなと思って」
65歳の切り替え手続きが“未完了”だった
洋子さんが受け取っていたのは、あくまで「特別支給の老齢厚生年金」であり、65歳以降に受け取る年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)とは別物です。特別支給の老齢厚生年金を受けている人が65歳になった場合、新たに年金請求書の提出が必要になります。
封筒を開けると、年金請求書と説明書類が入っており、提出期限はすでに過ぎていました。
「これを出していなかったから、振り込まれなかったんですか」「その可能性が高いです。ただ、最終確認は年金事務所で行いましょう。今日は窓口で聞くことと、持っていく書類を整理しましょう」
そして、年金事務所に確認する項目を3つに絞りました。
1.65歳時の年金請求書は未提出か
2.提出期限を過ぎた場合、どの月分から支給対象になるのか
3.初回振込はいつ頃になる見込みか
これで一つの悩みが解消された洋子さん。しかし机の上に残った書類を見ると、解決すべき問題はそれだけではないことがわかってきました。
