熟年離婚した両親
会社員として働くAさん(36歳)は独身。都内の1LDKで一人暮らしをしています。両親は実家で2人暮らし。父親は67歳で会社を退職済み、母親は64歳。母親は結婚を機に仕事を辞め、その後は長年、専業主婦として家庭を支えてきました。
両親の仲があまりよくないことは、Aさんも以前から知っていました。
「昔からよくケンカしていました。子どものころは嫌でしたけど、私が家を出てからは『もう夫婦の問題だから』と思って、あまり口を出さないようにしていたんです」
そんなある日、母親から突然電話がかかってきました。
「お母さん、お父さんと離婚することにしたから」
驚いたAさんでしたが、反対はしませんでした。母親によれば、長年積み重なった不満が限界に達したとのこと。
「お母さんがそうしたいなら、私は止めないよ。ただ、これから住むところとか、お金のことは大丈夫なの?」
Aさんがそう聞くと、母親は明るく答えました。
「大丈夫、大丈夫。財産分与もあるし、年金もあるから。なんとかなるって」
その言葉を聞き、Aさんは「そこまで考えているなら」と、それ以上追及しませんでした。しかし数週間後。仕事を終えて自宅に帰ろうとしていたAさんのスマートフォンに、母親からメッセージが届きます。
「いま家の前にいるよ!」
嫌な予感がしました。急いで帰宅したAさんが自宅マンションの前に着くと、そこには大きなスーツケースを2つ持った母親が立っていました。
「来ちゃった! 今日からよろしくね!」
転がり込んできた母
Aさんは母親のスーツケースを凝視しながら、「泊まりに来たの?」と問いました。
「違うよ。離婚したっていったでしょ? 今日、家を出てきたの。だから、しばらくここに住ませてもらおうと思って」
Aさんは言葉を失います。母親から、同居について相談されたことは一度もありません。Aさんの部屋は1LDK。来客用の部屋などなく、Aさん自身、週に数回は在宅勤務をしています。
「しばらくって、どのくらい?」
そう聞くと、母親は悪びれる様子もなく答えました。
「まだ決めてないよ。急いで家を借りても家賃がもったいないし。あなたも1人なんだから別にいいでしょ」
この言葉に、Aさんは背筋が寒くなったといいます。母親のいう「しばらく」は、数日や数週間ではない。もしかすると、このままずっと自分の家に住むつもりなのではないか――。
