最後に失うのは「信用」という最大の資産
全東信事件が示した最大の教訓は、粉飾は会社を救うものではなく、経営改善を先送りする行為だということである。
報道では20年以上前から粉飾が続いていた可能性が指摘されているが、その経緯や、なぜ長期間発覚しなかったのかについては、現在も調査が続いている。また、一部では計画的な破綻ではないかとの見方もあるが、現時点では事実関係は明らかになっておらず、今後の調査結果を待つ必要がある。
貝井氏は、過去の大型粉飾事件との共通点を次のように語る。
「東芝では、将来計上すべき利益を前倒しし、本来計上すべき費用や損失を先送りする会計処理が問題となりました。オリンパスでは損失隠し、そして今回の全東信では貸借対照表全体を書き換えるような粉飾が疑われています。手口は異なりますが、『今回だけ何とかなる』という判断を繰り返した結果、企業にとって最も重要な資産である『信用』を失ったという点は共通しています」
企業経営において信用とは、金融機関からの融資だけを意味するものではない。取引先との継続的な取引、従業員の安心感、株主や投資家からの評価、地域社会からの信頼――そのすべてが信用の上に成り立っている。
一度失われた信用を取り戻すことは容易ではない。だからこそ、決算書をごまかして問題を先送りすることは、会社の未来を守るどころか、自ら最も大切な資産を失うことにつながるのである。
貝井氏は、経営者が向き合うべきものは「決算書」ではなく「現実」だと強調する。
「決算書は会社の健康診断です。悪い結果が出たときに必要なのは、数字を書き換えることではなく、原因を分析し、改善することです。粉飾は、一時的に数字を良く見せることはできても、会社そのものを良くすることはできません。経営者が向き合うべき相手は、決算書ではなく現実です。正しい決算書を基に現状を把握し、金融機関や専門家とも率直に相談しながら改善を進めることこそが、会社を長く存続させる最善の方法だと考えます」
企業経営の土台は、利益でも売上でもない。「信用」であるという。全東信事件は、その最も重要な資産を失ったとき、企業がどのような結末を迎えるのかを改めて示した。経営者に求められるのは、数字を取り繕うことではない。現実を直視し、課題を認め、改善へ踏み出す勇気である。その積み重ねこそが、企業の信用を守り、長く存続させる最大の力になるのではないだろうか。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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