(※写真はイメージです/PIXTA)

全東信の粉飾決算疑惑では、預金残高の水増しや架空債権の計上、営業権や関係会社との取引を巡る疑義など、大規模な不正会計の実態が明らかになりつつある。一方で、「20年以上も粉飾が続いていたのに、なぜ見抜けなかったのか」という疑問も少なくない。しかし、不正が発覚した後に責任論だけを語っても再発防止にはつながらない。重要なのは、監査や金融機関はどのような情報を基に判断していたのか、そして企業は粉飾によって何を失うのかという視点である。公認会計士・税理士の貝井英則氏の見解を交えながら、監査や金融機関の役割と限界、そして企業経営において最も重要な「信用」の意味について考える。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

税務調査ではどう見られるのか

粉飾というと、「税務署に見つかるのではないか」と考える経営者も少なくない。しかし、税務調査の目的は適正な課税所得を把握することであり、金融機関の融資審査とは視点が異なる。

 

貝井氏は、利益を少なく見せる粉飾と、多く見せる粉飾では意味合いが異なると説明する。

 

「税務調査の目的は、適正な課税所得を把握することです。そのため、利益を少なく見せる粉飾は重点的な調査対象になります」

 

一方、利益を水増しする粉飾は、本来より多く税金を納めることになるため、税務調査の主たる目的とは異なる。

 

「利益を多く見せる粉飾は、本来より多く税金を納付することになるため、税務調査の主たる目的とは異なります。ただし、税務調査でも売掛金や預金、契約書、資金移動などを確認するため、その過程で利益水増し型の粉飾が判明することはあります」(貝井氏)

多く納めた法人税も、すぐには戻らない

利益を水増しすれば、本来より多く法人税を納めることになる。そのため、「納め過ぎた税金なのだから返してほしい」と考える経営者もいるかもしれない。しかし、粉飾決算の場合は通常の過大納付とは扱いが異なる。

 

貝井氏は、税法には仮装経理による過大申告について特別な制度が設けられていると説明する。

 

「利益を水増しして多く納付した法人税も、直ちに返還されるわけではありません。税法には仮装経理に基づく過大申告について特別な制度が設けられており、税務上も粉飾が有利にならないような仕組みとなっています」

 

法人税法第135条では、仮装経理に基づく過大申告が更正された場合、通常の更正とは異なる還付制度が設けられている。直ちに現金が還付されるのではなく、一定の要件のもとで税額控除などにより調整される仕組だ。これは、利益を意図的に大きく見せて金融機関から有利な融資を受け、その後に税金だけ返してもらうという不正を防ぐためだ。粉飾は資金繰りを改善するどころか、税務上も企業に重い負担を残すことになる。

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