税金を軽くし、低所得者には現金を給付…世界で広がる「給付付き税額控除」――日本版はどう設計されるのか【国際税務の専門家が解説】

税金を軽くし、低所得者には現金を給付…世界で広がる「給付付き税額控除」――日本版はどう設計されるのか【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

食料品への消費税率を2年間ゼロ%とした後、給付付き税額控除を導入する予定です。納税者には税額控除を行い、税額控除しきれない人や納税義務のない人には現金を給付することで、税制と社会保障を一体的に運用する仕組みです。すでに欧米ではさまざまな形で導入されており、低所得者支援や勤労支援、消費税の逆進性対策など、それぞれの国の事情に応じて制度設計が行われています。日本でも導入論が現実味を帯びるなか、どの国の制度を参考にするのか、日本独自の制度を構築するのかが大きな論点となっています。

(3)英国―社会保障を一本化したユニバーサルクレジット

税制調査会が2012年に取り上げた諸外国の制度のなかで、その後最も大きく姿を変えたのが英国です。

 

現在、英国の給付制度の中心となっているのが、ユニバーサルクレジット(Universal Credit:UC)です。これは2012年、キャメロン政権下で法制化され、従来の複数の給付制度を一本化したものです。統合されたのは、①求職者手当、②雇用・サポート手当、③所得補償、④住宅手当、⑤勤労税額控除、⑥児童税額控除の6制度です。

 

従来は、それぞれ異なる制度として申請や支給が行われていましたが、UCでは一つの制度として一元的に管理されるようになりました。その結果、利用者は複数の窓口を利用する必要がなくなり、行政側も制度運営を効率化できるようになりました。

 

米国のEITCでは、税額控除と現金給付を組み合わせる仕組みが採られています。一方、英国では税額控除という形ではなく、必要な支援額を現金給付として支給する方式へ移行しています。つまり、税制を活用した支援というよりも、社会保障制度として所得保障を行う色彩が強い制度といえます。

 

2025年の自民党総裁選では、林芳正氏がこのUCを参考にした「日本版ユニバーサルクレジット構想」を提唱しました。複数の給付制度を一本化し、国民に分かりやすい制度へ再編するという考え方は、日本でも注目を集めています。

 

日本で英国型の制度を導入するには、多くの課題があります。現在、日本では児童手当や住民税非課税世帯への給付、生活保護、各種福祉給付など、制度ごとに担当省庁や自治体が異なっています。これらを一本化するには、行政の縦割りを見直す必要があるほか、既存制度との調整や法改正も避けて通れません。

 

英国には地方所得税が存在しない一方、日本では国税と地方税が密接に関係しています。税制そのものの前提条件が異なるため、英国の制度をそのまま導入することは現実的ではないでしょう。

次ページ日本版給付付き税額控除が抱える課題

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