(3)英国―社会保障を一本化したユニバーサルクレジット
税制調査会が2012年に取り上げた諸外国の制度のなかで、その後最も大きく姿を変えたのが英国です。
現在、英国の給付制度の中心となっているのが、ユニバーサルクレジット(Universal Credit:UC)です。これは2012年、キャメロン政権下で法制化され、従来の複数の給付制度を一本化したものです。統合されたのは、①求職者手当、②雇用・サポート手当、③所得補償、④住宅手当、⑤勤労税額控除、⑥児童税額控除の6制度です。
従来は、それぞれ異なる制度として申請や支給が行われていましたが、UCでは一つの制度として一元的に管理されるようになりました。その結果、利用者は複数の窓口を利用する必要がなくなり、行政側も制度運営を効率化できるようになりました。
米国のEITCでは、税額控除と現金給付を組み合わせる仕組みが採られています。一方、英国では税額控除という形ではなく、必要な支援額を現金給付として支給する方式へ移行しています。つまり、税制を活用した支援というよりも、社会保障制度として所得保障を行う色彩が強い制度といえます。
2025年の自民党総裁選では、林芳正氏がこのUCを参考にした「日本版ユニバーサルクレジット構想」を提唱しました。複数の給付制度を一本化し、国民に分かりやすい制度へ再編するという考え方は、日本でも注目を集めています。
日本で英国型の制度を導入するには、多くの課題があります。現在、日本では児童手当や住民税非課税世帯への給付、生活保護、各種福祉給付など、制度ごとに担当省庁や自治体が異なっています。これらを一本化するには、行政の縦割りを見直す必要があるほか、既存制度との調整や法改正も避けて通れません。
英国には地方所得税が存在しない一方、日本では国税と地方税が密接に関係しています。税制そのものの前提条件が異なるため、英国の制度をそのまま導入することは現実的ではないでしょう。
