(2)米国―勤労を支援する給付付き税額控除
米国では、給付付き税額控除として代表的な制度が二つあります。一つは「勤労所得税額控除(Earned Income Tax Credit:EITC)」、もう一つは「児童税額控除(Child Tax Credit)」です。
EITCは1975年、フォード政権下で創設されました。目的は、中低所得者に課される社会保険料負担を軽減し、働く意欲を維持・促進することにあります。児童税額控除は1998年に導入され、子育て世帯への支援を目的としています。
EITCでは、給付を受けるためにさまざまな要件が設けられています。2025課税年度では、所得水準、児童数、資産所得、居住要件などが細かく規定されています。
たとえば、適格児童が3人以上いる夫婦合算申告の場合には総所得が6万8,675ドル未満であることが必要です。児童数が少なくなるほど所得上限も低くなり、児童がいない場合には1万9,104ドル未満となります。
また、資産所得は1万1,950ドル以下でなければならず、課税年度を通じて米国市民または居住外国人であること、社会保障番号(SSN)を保有していることなども条件となっています。
日本と異なる特徴として、米国では確定申告書(Form1040)に利子や配当などの資産所得も記載され、それらを含めた総所得(Adjusted Gross Income:AGI)によって給付額が判定されます。給付額の計算には、「Earned Income Credit Table」という一覧表が用いられます。この表では、所得金額、申告方法、児童数などを組み合わせて給付額を決定します。
一方で、この制度は非常に細かな計算が必要となるため、納税者にとっても税務当局にとっても手続きが複雑になりやすいという課題があります。EITCは「働く人を支援する制度」という性格が明確であり、単なる生活保護ではなく、就労を後押しする政策として高く評価されています。
このように、米国の給付付き税額控除は、所得再分配だけでなく、就労促進という政策目的を組み合わせている点に大きな特徴があります。
