熟年離婚で避けて通れない「財産分与」
もし離婚が成立した場合、避けて通れないのが「財産分与」です。婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産(共有財産)が対象ですが、芳夫さん夫婦の場合、
・預貯金等のうち約3,800万円(婚姻期間中に形成した分)
・持ち家の査定額約3,000万円
合計約6,800万円の共有財産があります。原則として夫婦それぞれ2分の1ずつ。単純計算では、約3,400万円ずつ。さらに、婚姻期間中の厚生年金についても、年金分割の対象になる可能性があります。
ただし、離婚は、「離婚したい」の一言で成立するものではありません。夫婦の一方が離婚を拒否した場合、話し合いや調停を経て、最終的には裁判で「夫婦関係が実質的に破綻しているか」を争うことになります。
しかし、明確な離婚事由がない場合、同居したままで破綻を証明するのは難しく、実務上は一定期間の「別居」が必要とされるケースがほとんどです。
これを踏まえ、恵子さんは、芳夫さんが離婚を拒否したら別居に踏み切ろうと決めていました。さらに、その先の調停や裁判を見据え、夫婦関係について記した日記、芳夫さんとのやり取りを記録したメモ、家事や生活費を巡る長年の経緯など、客観的な証拠を着実に残していたのです。
恵子さんの中では、もうずっと前から「2人の老後」は存在していませんでした。
老後を前に突き付けられた「夫婦関係の決算」
厚生労働省の「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、令和6年の離婚件数は18万5,895組(前年より2,081組増)。このうち婚姻期間20年以上の熟年離婚は4万686組(前年より876組増)で、全体の約2割を占めています。
夫婦の問題は、ある日突然生まれるものではなく、時間をかけて少しずつ積み重なっていくもの。今回のケースが「産後の恨み」から始まったように、本人が気付かないまま、ある日突然、目の前に「離婚」という形で現れることもあります。
芳夫さんが突き付けられたのは、30年以上前から積み重なっていた夫婦関係の決算でした。お互いに協力し合いながら生きる姿勢、小さな不満や寂しさに向き合うことこそ、老後資金の準備と同じぐらい大切なことなのかもしれません。
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