孫には会いたい、それでも…「5泊6日」の帰省に思わずため息
「今年は8月10日から15日まで行くよ」
長男からメッセージが届き、昭夫さん(仮名・72歳)は隣にいた妻の敏子さん(仮名・70歳)にスマートフォンを見せました。敏子さんが最初に口にしたのは、「楽しみね」ではありませんでした。
「また今年も来るのか……」
夫婦には、会社員の長男とその妻、小学生の孫2人がいます。普段は新幹線で数時間の場所に暮らしており、毎年夏休みになると一家4人で帰省していました。
夫婦の年金は合わせて月約25万円。貯蓄は約2,700万円あり、住宅ローンを完済した戸建てで暮らしています。
長男一家が帰ってくることは、かつては夫婦にとって一大イベントでした。孫が幼いころには庭にビニールプールを出し、花火を買い、夕食には焼き肉や寿司を用意しました。
「年に一度だからと思って、何でもしてあげたくなったんです」
しかし、夫婦が70代になると事情が変わってきました。
4人が5泊すれば、食事は夫婦を含め毎日6人分です。朝はパンや果物、昼はそうめんや炒飯、夜は孫の好みに合わせて肉料理を用意します。
飲み物や菓子、アイスも普段とは比べものにならない速さでなくなります。
昨年、敏子さんが帰省期間中のレシートをまとめたところ、食材や外食だけで約7万円。孫への小遣いやレジャー代などを合わせると、10万円近く使っていました。
問題はお金だけではありません。
帰省前には布団を干し、普段使っていない2階を掃除します。滞在中は洗濯機を1日に何度も回し、食事が終われば大量の食器が残りました。
「お嫁さんも手伝ってくれます。でも、やっぱり人の家ですから、台所は私が中心になります。みんなが帰った翌日は何もしたくありません」
昨年は長男一家を見送ったあと、敏子さんが疲れて夕方まで横になっていました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の月平均消費支出は26万3,979円で、うち食料は7万8,964円です。可処分所得は22万1,544円で、平均では消費支出が可処分所得を上回っています。高齢世帯では、帰省などによる一時的な数万円の支出も小さくない負担です。
それでも敏子さんには、長男に「短くして」と言えない理由がありました。
「孫が来るのを嫌がるおばあちゃんだと思われたくなかったんです」
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