「同居しない?」娘の提案に夫婦が出した答え
「近くに来るなら、いっそ一緒に住んでもいいんじゃない?」
長女からそう言われたのは、孝之さん(仮名・71歳)と恵美子さん(仮名・71歳)が住み替えを考え始めたころでした。
夫婦の年金は合わせて月約32万円。長く暮らした郊外の戸建ては住宅ローンを完済し、貯蓄も約3,500万円ありました。
大きな不満はありませんでしたが、最寄り駅まではバスが必要です。スーパーも徒歩では20分以上。70歳を過ぎ、夫婦とも車をいつまで運転するか考えるようになりました。
一方、長女一家は電車で1時間ほど離れた都市部のタワーマンションに暮らしています。ある日、恵美子さんが「ここで80歳まで暮らせるかな」と漏らしたことから、長女の自宅近くへの住み替えが具体化しました。
長女から同居を提案されても、夫婦の答えは「近くには行く。でも一緒には住まない」でした。
「娘夫婦には娘夫婦の生活がありますし、私たちにもあります。同居して毎日顔を合わせるより、困ったときに行き来できるくらいがいいと思ったんです」
選んだのは、長女宅から徒歩15分ほど離れた中古タワーマンションでした。
駅とスーパーが近く、病院も徒歩圏内。室内の段差が少なく、戸建てのように庭や外壁を自分たちで管理する必要もありません。
価格は約6,300万円。戸建てを約5,700万円で売却し、諸費用や引っ越し、内装の手直しなどを含め、差額は貯蓄から補いました。
引っ越した当初、夫婦は便利さ以上に娘一家が近くにいる安心感を感じました。
孫が学校帰りに立ち寄ることもあり、夕食のおかずを作りすぎた日は娘宅へ届けます。孝之さんが体調を崩した際には、長女がすぐ様子を見に来てくれました。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の人の住居形態は「持家(一戸建て)」が79.8%、「持家(分譲マンション等の集合住宅)」が3.2%となっています。高齢期にも戸建てで暮らす人が多数ですが、移動や住宅管理の負担を考え、住み替えを検討するケースもあります。
ただ、近くに住んだからこそ、夫婦には一つ気をつけていることがありました。
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