「半年くらい実家に置いてほしい」50歳息子を迎え入れた母
「母さん、しばらく世話になるよ」
5年前、和子さん(仮名・69歳)の家に、長男の隆司さん(仮名・50歳)が大きなバッグを抱えて戻ってきました。
隆司さんは20代で家を出し、長く一人暮らしをしていました。しかし勤務先の業績悪化をきっかけに退職。その後の仕事も決まらず、家賃を払い続けるのが難しくなったといいます。
「半年くらい実家に置いてほしい。その間に仕事を探すから」
和子さんは断りませんでした。夫はすでに亡くなり、一人暮らしだったこともあります。
「息子が困っているなら、半年くらいならと思いました。仕事が決まれば、また出ていくものだと思っていました」
ところが半年後も、隆司さんは実家にいました。短期の仕事をすることはあっても長続きせず、再び仕事を探す。その繰り返しです。
生活費は当初「仕事が決まってからでいい」と受け取っていませんでした。
食事は和子さんが用意し、電気代や水道代もそれまでどおり和子さんの口座から引き落とされます。一人暮らしのころは簡単な夕食で済ませることもありましたが、息子がいると肉や魚を買う量も増えました。
「母さん、シャンプーないよ」
「昼飯、何かある?」
そんな会話も、いつの間にか日常になりました。
和子さんの年金は月約16万円。住宅ローンのない持ち家で、夫が残したものを含め、当時の貯蓄は約1,300万円ありました。
最初のうちは数万円の支出増を深刻には考えていなかったといいます。状況が変わったのは、同居から3年ほど経ったころでした。
給湯器の交換や固定資産税などまとまった支払いが重なり、通帳を見た和子さんは、貯蓄が想像以上のペースで減っていることに気づきます。息子の国民年金保険料を一時的に立て替えたり、携帯電話料金を代わりに支払ったりしたこともありました。
「一つ一つは『今回だけ』だったんです。でも、それが何年も続いていました」
