「子どもに迷惑をかけたくない」が本末転倒になる前に
和枝さんのように、「できるだけお金を取っておかなければ」と考える高齢者は少なくありません。その裏には、長寿化に伴う介護、施設入居などの現実的な不安があります。
厚生労働省「令和5年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.09年、女性の平均寿命は87.14年。女性の約2人に1人が90歳まで生存すると推計されています。
こうした不安を増幅させているのが、「介護施設には莫大なお金が必要」というイメージです。たしかに高級な介護付き有料老人ホームのなかには、入居時に数千万円規模の費用が必要になる施設もあります。
しかし、それはあくまで一部。実際には、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、入居一時金のない有料老人ホームなど、入居条件はあるものの比較的費用を抑えられる選択肢もあるでしょう。
例えば、和枝さんが85歳で施設に入居し、95歳まで10年間暮らしたと仮定してみましょう。
月額利用料20万円の施設であれば、年間費用は約240万円。和枝さんには年144万円の年金収入があるため、預金から補う金額は年間約100万円程度になります。仮に10年間続いたとしても、必要となる取り崩し額は約1,000万円前後。
もちろん、医療費や介護度、施設の種類によって状況は変わりますが、少なくとも「施設に入ったら、すぐにお金が枯渇する」という状況とはいえません。
そもそも、介護サービスを最大限活用した在宅介護という選択肢もあります。あるいは、より安い費用の施設を探す、持ち家という資産もあるため、状況によっては売却や活用を検討する選択肢もあります。
和枝さんのように、「子どもに迷惑をかけたくない」と考える高齢者は少なくありません。しかし、そのために冷暖房を我慢したり、必要な受診を先延ばしにしたりして健康を損ねてしまっては、本末転倒です。
大切なのは、この先何にいくら使うことになるのか、その費用をイメージではなく具体的に知ること。その安心感こそが、残りの人生を少し豊かに過ごすための第一歩になるでしょう。
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