朝起きても予定がない…退職後は「同じ日々の連続」
「暇だけは山ほどありました」
徹さん(仮名・69歳)がそう振り返るのは、65歳で会社を退職してからの数年間です。
会社員時代は営業職として働き、50代からは管理職を務めました。退職後は妻の由美さん(仮名・67歳)と二人暮らし。夫婦の年金は合わせて月約30万円あり、金融資産も約5,000万円あります。住宅ローンもすでに完済していました。
退職前、徹さんは自由な生活を楽しみにしていました。
「毎朝目覚ましをかけなくていい。満員電車にも乗らなくていい。それだけで十分だと思っていました」
最初の数ヵ月は、平日に映画館へ行ったり、妻と旅行したりして過ごしました。ところが半年もすると、することがなくなってきました。
朝7時ごろ起床し、新聞を読む。朝食を食べてテレビを見る。昼前に近所を散歩し、帰宅して昼食。午後もテレビやインターネットを見ているうちに夕方になる。
「今日は何してたの?」
夕食時に由美さんから聞かれても、
「別に何も」
と答える日が増えていきました。
会社員時代の知人と会うこともありましたが、退職後も働いている人が多く、頻繁には誘えません。趣味と呼べるものもなく、ゴルフは会社の付き合いで続けていただけでした。
由美さんには、以前から通っている習い事や友人との予定があります。
ある平日の朝、出かける準備をしている妻に徹さんが尋ねました。
「今日はどこ行くの?」
「友達とランチ。そのあと教室」
「何時に帰る?」
由美さんは少し困った顔をしました。
「夕方かな。でも、私の予定を毎回聞かなくてもいいでしょう」
その言葉に、徹さんは何も返せませんでした。自分には予定がないから、妻の予定ばかりが気になっていたのです。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、60歳以上の人について、生きがいを「十分感じている」「多少感じている」と回答した割合が多くを占める一方、社会とのつながりや活動への参加状況には個人差があります。退職によって仕事を通じた人間関係が減る場合、家庭以外にどのような居場所を持つかも課題になります。
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