「70歳になったら行こう」先送りしてきた夫婦旅行
「この写真、懐かしいね」
ある休日の午後、修一さん(仮名・73歳)と妻の洋子さん(仮名・71歳)は、押し入れから出てきた古いアルバムを眺めていました。そこには、20年以上前に家族で北海道を訪れたときの写真がありました。
「定年したら、今度は二人でゆっくり旅行しようって言ってたよね」
洋子さんの言葉に、修一さんは苦笑しました。
夫婦の年金は合わせて月約24万円。現在の貯蓄は約4,200万円あり、住宅ローンも完済しています。
修一さんは会社員時代から堅実な性格でした。退職金にもほとんど手を付けず、65歳で仕事を辞めてからも生活水準を変えませんでした。
外食は月に1、2回。服や家電も壊れるまで使い、旅行を計画しても、費用を見るとためらいます。
65歳のときには、洋子さんがヨーロッパ旅行を提案しました。
「二人で100万円近くかかるなら、今じゃなくてもいいだろう」
67歳のときには北海道を一周しようという話が出ましたが、「もう少し安い時期にしよう」と延期しました。
その後も、「70歳になったら行こう」「来年でも行けるから」と先送りを繰り返しました。
ところが実際に70代になると、夫婦とも長時間の移動を以前ほど楽しめなくなりました。洋子さんは、「飛行機に10時間も乗る旅行は、もういいかな」と言うようになり、修一さん自身も、何都市も巡るような旅行には気が進まなくなっています。
洋子さんは言いました。
「お金がなかったわけじゃないんだよね」
修一さんは返す言葉がありませんでした。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、世帯主が65歳以上の二人以上世帯の貯蓄現在高の中央値は1,604万円です。また、4,000万円以上の貯蓄を持つ世帯は18.8%となっています。修一さん夫婦の4,200万円は比較的多い水準といえます。
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