生成AIの導入で、会社からまさかの「退職勧奨」
このように、本業も副業も順調だったAさんでしたが、状況が一変します。勤務先が、生成AIを活用した開発体制の見直しを始めたのです。Aさんの所属部署では、定型的なコード作成やテスト業務の一部がAIツールに置き換えられ、外部委託や人員配置の見直しが進みました。
上司との面談で、Aさんはこう告げられました。
「Aさんのスキルは高いんだけど、今後この部署で同じポジションを維持するのは難しいかもしれない。退職金の上乗せもあるし、外で活躍する道も視野に入れてみてはどうかな」
突然の退職勧奨です。人手がいらなくなり、会社は表向き「解雇」ではなく、「今後のキャリアを考えた選択肢」として早期退職を促しました。もちろん腑に落ちない面も多かったものの、会社に残ったとしても先行きは不透明です。また、副業で年間300万円程度の売上があることも、Aさんの判断を後押ししました。
「副業を続けながら、次の転職先を探せばいい。失業手当もあるはずだ」
思わぬ出費にヒヤリも、心の支えとなった“皮算用”
Aさんは、雇用保険についても一定の知識がありました。
「40歳で会社都合の退職勧奨、勤続10年、月給50万円であれば、基本手当日額(失業手当)は上限に近いはずだ」
ハローワークの給付日数表を調べると、所定給付日数は240日とあります。基本手当日額は8,055円程度。総額約193万円になる計算です。
「毎月の副業収入が20万~30万円くらいある。そこに失業手当が入れば、焦って転職しなくてもいい。むしろ、この機会に自分に合う会社をじっくり探せる」
Aさんは、そう皮算用していました。ところが、退職後すぐに、避けられない支出が発生しました。人事部から会社の借り上げ社宅について、「退職日以後は退去するか、自己契約に切り替えてください」と連絡があったのです。
これまでは会社契約の社宅として家賃負担が抑えられていましたが、自己契約に切り替えれば、礼金・敷金・保証会社の費用、毎月の家賃負担が一気に増える可能性があります。妻も、「失業手当って、いつから入るの? 家賃も上がるなら、貯金を取り崩すことになるよね」と不安そうです。
それでもAさんはどこか余裕の表情で、こう言い切ります。
「大丈夫。今回の退職は会社都合みたいなものだし、俺の計算では240日分もらえるはず」
ところが、ハローワークの窓口で、その自信は崩れることになるのでした。

