「まさか団地暮らしに」とも思ったが…
「持ち家を手放したわけですからね。引っ越し直後は“人生の最後に団地暮らしになるとは……”という思いがなかったわけじゃないです」
そう話す靖男さんですが、家賃は月5万円。住宅ローンはもちろん、管理費や修繕積立金、固定資産税の負担もありません。部屋はコンパクトになりましたが、夫婦2人には十分。掃除の負担が減り、光熱費も下がりました。近所には同年代の住民も多く、自然と顔見知りが増えていっています。
「住んでみれば、思いのほか快適でね。なにより住宅費用がぐっと下がった。アルバイトもようやく辞められたんです。この団地に引っ越して本当によかった、今はそう思っていますよ」
老後の住まいで大切なのは「無理なく住み続けられる」こと
身軽になった夫婦は、家を手放し団地暮らしとなった今、以前よりもずっと穏やかな表情で暮らしています。
もっとも、公営住宅は応募者が多く入居倍率が高い地域もあります。建物の老朽化が進んでいるケースもあり、エレベーターの有無や買い物環境などによっては不便を感じることもあるでしょう。年金収入からは高齢者向けの様々な控除が差し引かれるため、田中さん夫婦の場合は入居基準をクリアできましたが、収入条件には注意が必要です。
公営住宅への住み替えがすべての人にとって正解とは限らないため、高齢者向け賃貸住宅やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、民間賃貸など、状況に応じてさまざまな選択肢を比較することが大切です。
老後の住まい選びで本当に大切なのは、所有することではなく、無理なく住み続けられること。田中さん夫婦の選択は、そのことを私たちに教えてくれています。
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