「親なんだから頼って当然」…息子との関係が変わり始めたワケ
修一さん(仮名・74歳)と妻の節子さん(仮名・72歳)は、夫婦で年金月17万5千円ほどを受け取りながら暮らしています。持ち家のため家賃はかかりませんが、固定資産税、光熱費、医療費、家の修繕費を考えると、余裕があるとはいえませんでした。
一人息子の大輔さん(仮名・45歳)は、結婚して別の地域で暮らしています。以前は盆や正月に帰省し、月に数回は電話もありました。節子さんは、息子からの連絡を何より楽しみにしていました。
「次はいつ帰ってくるの?」
「孫の写真、もっと送って」
「こっちはお金が厳しいのよ」
最初は、何気ない会話のつもりでした。しかし、電話のたびに愚痴や頼みごとが増えていきました。
給湯器が壊れたときは、大輔さんに費用の一部を出してもらいました。固定資産税の支払いが苦しい月にも、数万円を送ってもらったことがあります。大輔さんは最初、黙って対応していました。
「親が困っているなら仕方ない」
そう思っていたのです。
しかし、大輔さんにも住宅ローンがあり、子どもの教育費もかかります。仕事も忙しく、休日は自分の家族と過ごす時間も必要でした。
ある年の正月、帰省した大輔さんに、節子さんは言いました。
「今年はもう少し帰ってきてくれない? 近所の人は、息子さんがよく来てくれるって言っていたわよ」
大輔さんは疲れた表情で答えました。
「うちにも生活があるんだよ」
節子さんは、その言葉にむっとしました。
「親にそんな言い方をするの?」
それ以降、電話は少しずつ減っていきました。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円で、平均では毎月約4.2万円の不足となっています。修一さん夫婦の年金月17万5千円は、この平均的な可処分所得を下回っており、突発的な支出があると家計はすぐに苦しくなりました。
だからこそ、夫婦は息子を頼りにしていました。しかし、その頼り方が、大輔さんには重くなっていたのです。
