母が失ったのは「家」だけではなかった
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上人口は3,624万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は29.3%となりました。65歳以上の一人暮らしは男女ともに増加しており、1980年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、2020年には男性15.0%、女性22.1%となりました。
高齢化の進展に伴い、離れて暮らす親の見守りや介護をどうするかは、多くの家族が直面する課題となっています。ただ、高齢者にとって住み替えは、単なる引っ越しではありません。
若い世代は新しい環境にも比較的順応できます。しかし高齢になるほど、人とのつながりや慣れ親しんだ地域が生きがいになっているケースは少なくありません。
早紀さんが失ったのも、家そのものではなく、近所の顔見知り、知り尽くした土地、聞き慣れた方言、毎月欠かさず通っていた墓参り……長年積み重ねてきた日常でした。
家族はどうしても安全を優先しますが、本人が幸せを感じながら暮らせることとは、必ずしも一致しません。呼び寄せ介護では、このズレがしばしば問題になります。
最近の洋輔さんは、休日になると母を車に乗せて、積極的に出掛けています。人混みを避けて、海を見たり、公園を歩いたり。早紀さんも徐々に笑顔が増えてきたといいます。
「このままだと、認知症になってしまうんじゃないかと心配で。もう戻れない以上、ここでの暮らしを少しでも楽しんでほしいんです」
親を呼び寄せるという選択は、家族の愛情から始まります。しかし高齢者にとっては、住み慣れた土地を離れることが、想像以上に大きな喪失になることもあります。だからこそ家族には、「本人が幸せを感じられる場所はどこなのか」という視点が求められるのかもしれません。
【注目のセミナー情報】
【相続対策】6月11日(木)オンライン開催
弁護士が見てきた「失敗事例」から学ぶ!
「相続×アパート活用」のリアル
【短期償却】6月13日(土)オンライン開催
《所得税対策×レバレッジ投資》
インフラ活用でキャッシュを効率的に残す仕組み
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
