「親孝行のつもりだった…」82歳母を呼び寄せた長男
「母さん、うちに来ないか?」
洋輔さん(56歳)は、実家の縁側に腰掛けながらそう切り出しました。九州の山間にある小さな村。そこで暮らしていた母・早紀さん(82歳)は、10年前に夫を亡くして以来、一人暮らしを続けていました。
春になれば畑で野菜を育て、近所の人と立ち話をし、月に一度は墓参りへ。便利ではありませんでしたが、軽自動車を乗り回し、早紀さんは元気に暮らしていたといいます。
しかし80歳を過ぎた頃から、家族の不安は大きくなります。もし転倒したら、夜中に具合が悪くなったら、認知症が始まったら……。早紀さんには洋輔さんを含めて5人の子どもがいましたが、全員が町を離れて独立し、家庭を築いています。誰かが近くで見守ることはできません。
兄弟姉妹で話し合いをして、出した結論は、長男である洋輔さんが母を引き取ることでした。洋輔さんは東京で妻と暮らしています。自営業のため比較的時間の融通が利き、子どもは独立済み。何より、長男として頼りになる存在でした。
その代わり、将来的には母の財産を洋輔さんが相続する。介護負担と財産をセットで整理する形で、家族全員が納得。母も「洋輔がそばにいたら安心だ」と、その時は笑顔でした。
誰もいなくなる実家は売却することに。土地付きで約900万円。さらに早紀さんには約2,100万円の預貯金がありました。
「これなら母さんの生活費も心配ないな」
こうして、母を引き取り3人暮らしがスタートすることになりました。しかし、3ヵ月ほどの間に、異変が起こり始めたのです。

