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令和8年税制改正大綱における「清算制度」の“問題点”
令和8(2026)年度税制改正大綱では、道府県民税利子割に清算制度を導入することとし、次の措置を講ずることとなりました。
(1)都道府県は、当該都道府県に納入された利子割額から徴収取扱費に相当する額を控除した額を、各都道府県ごとの清算基準額に応じて按分し、当該按分した額のうち他の都道府県に係る額を他の都道府県に対し、それぞれ支払うものとする。
(2)(1)により他の都道府県に支払うべき金額と他の都道府県から支払を受けるべき金額は、関係都道府県間で、それぞれ相殺するものとする。
(3)清算基準額は、各都道府県ごとに、当該都道府県内に住所を有する個人に係る所得の金額に相当する金額として算定した額で当該年度の初日の属する年の前年前3年内の各年に係るものを平均した額とする。
ただし、この清算制度にはいくつかの問題点があります。
まず、上記の動向は、総務省が管轄する地方税の再配分に関するものであり、財務省が管轄する利子所得課税そのものの見直しには踏み込んでいません。
利子所得の課税は、第二次世界大戦後の「シャウプ勧告」による総合課税、その後の源泉分離課税への移行など、制度改正を重ねてきました。昭和38(1963)年には「少額預金等に係る利子所得の非課税制度」(マル優制度)が創設されましたが、平成19(2007)年に原則廃止となっています。
この背景には、戦後の日本経済が関係しています。戦後、日本経済の復興期には、企業が銀行から資金を借りて事業を再建する「間接金融」が大きな役割を果たしました。こうした状況のなかで、銀行に資金を集めるためには国民の貯蓄が不可欠だったことから、政府は貯蓄を促す目的で利子に対する税制上の優遇措置を講じてきました。
しかし、マル優制度の乱用が問題視され、昭和55(1980)年にはグリーンカード制度が提案されたものの廃止され、昭和62(1987)年に現行の分離課税制度が導入されました。
現行制度の導入は、マル優制度の乱用防止が主な趣旨でしたが、他方で富裕層にとっては源泉分離課税が一定の優遇措置として機能している側面もあります。長く続いた低金利期が終わり、現在は利子率が上昇傾向にあるからです。
また、検討が進む「給付付き税額控除」の適用要件として、資産所得の有無が問題視されています。しかし、資産所得を正確に把握するにはマイナンバー制度のさらなる普及が必要であることから、資産所得の有無は適用要件から除外される見通しです。
とはいえ、シャウプ勧告にあるように、源泉徴収を行ったうえで総合課税とする方式も、今後検討されるべきではないでしょうか。
この見直しが実現すれば、富裕層への課税が強化されるとともに、「貯蓄から投資へ」という政府方針を間接的に後押しすることになりそうです。
矢内一好
国際課税研究所
首席研究員
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