食料品消費税減税と給付付き税額控除ーー国民的議論に向けた論点を整理

食料品消費税減税と給付付き税額控除ーー国民的議論に向けた論点を整理
(※写真はイメージです/PIXTA)

物価高が長期化するなか、政府・与党では、食料品に係る消費税の減税や給付付き税額控除の導入について議論が進められています。しかし、これまで実施された給付政策については、その効果や課題について十分な検証が行われているとは言い難い状況です。2020年の特別定額給付金では、消費喚起よりも貯蓄に回ったとの指摘があり、2024年の定額減税では、制度の複雑さや事務負担に対する批判も見られました。こうした経験を踏まえれば、今後の制度設計に当たっては、複数の選択肢を国民に示し、世論調査などを通じて国民の意向を把握したうえで議論を進めるべきなのかもしれません。

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これまでの給付政策はどのように評価されているのか

現在、国民会議の有識者会議および実務者会議において検討が進められています。2020年の新型コロナ対策として実施された特別定額給付金について、当時の麻生太郎財務大臣は「その分だけ個人の貯金が増えた」と述べています。

 

つまり、当初期待されていた消費喚起の効果は、十分には得られなかったという認識が示されたものと考えられます。

定額減税をめぐる課題と現場の負担

また、2024年に実施された定額減税では、2020年のコロナ給付金に対する反省を踏まえ、支給対象を絞り、所得制限が設けられました。

 

しかし、その一方で、企業の会計担当者や地方自治体からは事務負担の増加に対する批判があり、国民からも否定的な意見が多く見られました。

 

これまで実施されてきた給付策については、その効果に関する十分な検証や評価が行われているとは言い難い状況です。給付実施後に、報道機関等によるアンケート調査を通じて世論の一部が明らかになるという構図が続いています。

なぜ今、世論調査が必要なのか

現在、上記の国民会議では、外部の関係諸団体からヒアリングを行っていますが、内閣においても支持率等を含めた世論動向の調査を行っているとされています。

 

この際、いくつかの選択肢を示したうえで、国民を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を会議の議論に反映させてはどうでしょうか。

食料品消費税減税と給付政策をめぐる主な選択肢

その場合、例えば以下のような選択肢が考えられます。

 

① 高市早苗首相の所信表明のように、食料品に係る消費税を2年間ゼロとし、その後、給付付き税額控除を導入する。その場合、食料品のゼロ税率実施に多少時間を要してもやむを得ないとする。

 

② 食料品の消費税ゼロの実施を早めるため、レジ改修等の負担軽減を考慮し、税率を1%とすることもやむを得ないとする。

 

③ 食料品の消費税ゼロを見送り、低所得者等に対する給付のみを実施する。この場合、給付については2027年度中の実施を目指す。

 

④ 給付付き税額控除について、税額控除額を超える部分は現金給付とせず、社会保険料の軽減措置によって対応する。

 

⑤ イラン情勢の混乱等により、今後も物価高が続くことが予想されることから、食料品に係る消費税を恒久的にゼロとする。その財源については税収の上振れに依存するのではなく、標準税率を2%引き上げて12%とする。消費税率1%当たりの税収は約2.5兆円とされているため、2%引き上げによる約5兆円の増収分を食料品減税の財源に充てることで、国全体としての税収は概ね中立となる。この場合、国民の間では負担増となる層と減税となる層に分かれることになる。

 

⑥ できるだけ早期の実施を優先するのか、それとも多少時間を要しても、将来的な再改正を必要としない安定的で持続可能な制度の構築を優先するのか、どちらを望むかを問う。

問われる国民的な合意形成

以上の選択肢において、最も重要な論点は、食料品に係る消費税ゼロを実施するのか否かという点にあると考えられます。

 

物価高対策と生活支援をどのように進めるのかについては、財政負担や制度設計の問題だけではなく、国民生活に直結する課題でもあります。だからこそ、政策決定に当たっては、国民の意向を丁寧に把握し、幅広い合意形成を図りながら議論を進めていくことが求められているのではないでしょうか。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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