(※写真はイメージです/PIXTA)

鳥取県の一般会計は約3500億円にとどまる一方で、東京都は9兆円規模に達しています。さらに鳥取県は歳入の多くを地方交付税に依存しており、自主財源である県税の比率は2割にも満たない状況です。日本の地方財政は、「地方分権」を掲げながらも、税源の偏在と再分配に大きく依存する構造にあります。本稿では、2026年3月に『世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】』を刊行した矢内一好氏が、日本の地方税制度と米国の州税制度を比較しながら、地方財政の構造と格差是正のあり方について解説します。

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令和7年度 一般会計規模の小さい県ランキング

一般会計の当初予算の規模のみで当該県の財政状況を判断することはできませんが、参考として規模の小さい県は以下のとおりです。

 

① 鳥取県 3,548億円(歳入に占める県税16.6%、地方交付税39.5%)
② 高知県 4,481億円(県税15.0%、地方交付税38.2%)
③ 香川県 4,648億円(県税28.0%、地方交付税27.0%)

 

以下、福井県、徳島県、島根県、山梨県、佐賀県、秋田県、奈良県と続きます。東京都の予算は9兆6,539億円であり、東京23区のうち最大規模の予算を有する世田谷区は3,936億円と、鳥取県を上回る規模となっています。

 

これらの数値が示しているのは、単なる規模の違いではなく、税収基盤の偏在です。大都市圏は企業活動と人口の集中により安定した税収を確保できるのに対し、地方圏では税収基盤そのものが脆弱です。

県税の増収策はあるのか

上記の県は自主財源が乏しく、財源の多くを地方交付税や国庫支出金に依存しているのが実情です。

 

地方自治体には、税目や税率を一定範囲で独自に設定できる「課税自主権」が認められています。地方税法に定めのない税目を条例により創設することも可能であり、これを法定外税といいます。また、既存税目についても税率や課税標準の設定に一定の裁量が認められています。

 

しかしながら、こうした制度の活用によって得られる税収には限界があります。課税ベースとなる人口や企業が限られている以上、税率の引き上げや新税の導入は住民負担の増加や企業流出のリスクを伴うため、現実的な増収策とはなりにくいです。

 

このように、日本の地方税制度は「課税自主権」を形式的には認めつつも、実質的には税源の地域間格差に強く制約されている構造となっています。

米国州税の場合

これに対し、米国は日本のような中央集権体制とは異なり、州および市町村に広範な権限が認められています。商取引に関する法制度の多くは州法によって規定されており、税制も州ごとに大きく異なります。

 

たとえば、全米最大のGDPを有するカリフォルニア州は、州法人税・州所得税・州売上税のいずれも税率が比較的高い州です。GDP第2位のテキサス州では、州法人税および州所得税が存在しません。このため、税負担の軽減を目的として、カリフォルニアからテキサスへ移住する富裕層の動きが見られます。

 

また、GDP上位に位置するワシントン州においても、州法人税および州所得税は課されておらず、企業誘致を意識した税制設計が行われていると考えられます。

 

さらに、中西部のサウスダコタ州はGDP全米48位と経済規模が小さいにもかかわらず、州法人税および州所得税が存在しません。隣接するノースダコタ州ではこれらの税が課されており、州ごとの政策判断の差異が顕著です。

 

このように米国では、税制が州間競争の有力な手段となっており、税率の違いが企業立地や人口移動に直接影響を及ぼしています。

地方税の再分配と制度見直しの方向性

米国は連邦憲法により連邦政府の権限が限定されており、州の裁量が広く認められています。この制度的前提の違いから、日本が米国型の税制をそのまま導入することは現実的ではありません。

 

一方で、日本の地方税制度は税源の偏在を前提としており、地方交付税による再分配機能に依存しています。しかし、この仕組みは地方の自立性を高めるという観点では限界を抱えています。

 

今後の方向性としては、地方税法の見直しを通じて、税収の豊かな都道府県から財政基盤の弱い地域への再分配を強化することが考えられます。同時に、単なる財政移転にとどまらず、地域ごとの産業基盤の強化や人口政策と一体となった制度設計が求められます。

 

地方分権の実現とは、単に権限を移譲することではなく、税源のあり方そのものを再設計することにほかなりません。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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