「同族会社の廃業」と「高齢の母親の相続対策」
今回は、「同族会社の廃業」と「高齢の母親の相続対策」が同時に重なった、あるご相談事例をご紹介します。
このケースは、「会社清算」「高齢の親」「きょうだい間の温度差」「二次相続の税負担」「労務トラブル」などがすべて一気に噴き出した、同族会社では決して珍しくない、しかし非常に危険な局面でした。
一見すると、「税金の相談」「会社清算の相談」に見えます。しかし、実際にご相談を受けて感じたのは、問題の本質は税金ではない、ということです。
長女が一人で抱え込んでいた現実
今回ご相談に来られたのは、同族会社の清算人となっている長女・Tさん(50代)です。Tさんの父親は10年ほど前に亡くなっています。母親は80代で夫(Tさんの父親)から会社の代表を引き継いできました。母親は80代になり、判断力の低下が見られ、入院歴もあります。子どもたちは長女のTさん(ご相談者・清算人)と弟(50代)2人です。
母親は、2年前に公正証書遺言を作成されています。父親の相続は、いわゆる「一次相続」として、配偶者控除を使いながら一括で整理されていました。ただし、Tさんはここに強い不安を感じていました。
「一次相続は何とか終わったけれど、母の相続(二次相続)のとき、税金が相当かかるのではないか……」
これは、非常によくある感覚であり、正しい直感です。
配偶者控除を使い切った一次相続のあと、二次相続では、財産が集中し、控除が一気に減少、さらに相続人が1人減るわけで基礎控除が減ります。そうした状況が重なり、税負担が急激に跳ね上がるケースが多いからです。
「廃業」が持つ破壊力
このご家族が経営してきたのは、コンクリート関連の会社。ゼネコンやプラント系と関わる、約60年続いた家族経営の会社です。父親が亡くなったあとは、母親が事業を承継し、ここまで会社を支えてこられました。しかし、年齢と体力の限界から、2026年3月末で廃業する決断をされました。すでに組合への届け出も完了しています。
ここで、この会社特有の事情があります。この会社は組合所属のため、一般的な「株式譲渡」や「M&A」とは異なり、株式を売却するのではなく、営業権(経営権)を組合へ返還・売却することが決まりとなっています。廃業後、組合から多額の対価が支払われる予定という、かなり特殊な清算スキームを取ることになっていました。
会社と個人が混ざった危険な構造
さらに状況を複雑にしていたのが、不動産です。会社用地(約300坪)は、母親の個人名義です。母親の財産は他に土地が広い自宅。そこには本家と離れが建っています。地方のため、土地の単価自体はそれほど高くありません。しかし、面積が広いため、評価額としては相当な金額になります。
問題は、「会社のために使っている土地が、個人名義である」という点です。
廃業に伴い、会社が使うことはなくなりますので、土地を売るのか、貸すのか、そのまま持つのかなど、判断を迫られます。どの選択肢を取っても、税金と相続に大きな影響が出ます。
