不動産30ヵ所以上、借入2.2億円、総資産7億円
先日、あるお客様がご相談に来られました。Uさん(60代)は、いわゆる“成功した富裕層”です。
・所有不動産は30ヵ所以上
・借入は約2.2億円あるが、総資産は7億円超
長年にわたり、堅実かつ戦略的に不動産を取得してこられました。地方物件、都心物件、区分、1棟、土地活用など。
市況を読み、金融機関と交渉し、タイミングを逃さず動いてこられました。徹底的に数字を読み、リスクを管理し、着実に積み上げてきた資産形成です。そして現在、資産規模だけを見れば、十分に“成功者”といえる水準です。
元銀行員。出向先企業の株を20倍にした男
Uさんのすごさは、不動産だけではありません。もともとは銀行員。その後、出向した企業で経営に深く関わることになります。
当時、その会社の株価は3,000円。業績は低迷し、将来も不透明。しかしUさんは、財務の立て直し、資金繰り改善、事業整理を進め、組織を再構築していきました。
地道な改革の積み重ね。そして数年後に株価は6万円へ。実に20倍。数字にすれば簡単ですが、これは並大抵のことではありません。
・財務体質の改善
・事業ポートフォリオの再設計
・銀行との再交渉
・経営陣の刷新
金融と経営、両方を理解しているからこそできた成果です。この成功体験が、その後の不動産投資にも活かされていきました。
それでも、相続は決断できなかった
これだけの実績を持つUさん。投資も経営も、決断力は十分です。しかし、「相続設計だけは、決められなかった」とおっしゃいました。なぜでしょうか。
Uさんは、決して何もしていなかったわけではありません。
・銀行主催の相続セミナー
・税理士事務所の節税提案
・不動産会社の相続対策セミナー
・信託会社の家族信託説明会
その都度、個別相談にも足を運び、提案書も受け取ってきました。提案内容は明確です。
・資産管理会社の設立
・生前贈与の活用
・さらなる不動産取得
・法人への移転
・生命保険の活用
「贅沢な悩みかもしれません。でも、どれも腑に落ちなかった」とおっしゃいました。
Uさんが抱いていた違和感
Uさんが感じていた違和感は、ここでした。
・節税効果は説明される
・利回りは示される
・スキームも整っている
しかし、家族の将来像が描かれていない。
・長男は経営に関わるのか?
・他の子どもとのバランス
・将来、自分が認知症になったら借入2.2億円は誰が引き継ぐのか?
・不動産30ヵ所を誰が管理するのか?
“税金を減らす”提案はある。しかし“承継を設計する”提案がない。ここに、10年間の迷いの正体がありました。
富裕層ほど動けなくなる理由
資産が大きくなるほど、決断は難しくなります。
・失敗できない
・金額が大きい
・家族関係に影響する
・一度動かすと戻せない
特にUさんのように、不動産が30ヵ所以上ある場合、一部を動かすだけでも影響は大きい。さらに借入2.2億円がのしかかります。
金融機関との関係、担保構造、法人との関係、税務。すべてが連動しています。だからこそ、部分最適の提案では怖くて動けないのです。
Uさんの本当のテーマ
ヒアリングを重ねると、本質は3つでした。
① 長男に軸を置きたい
② しかし他の子にも公平感を持たせたい
③ 将来、判断能力が低下しても仕組みを回したい
つまり、
・相続
・認知症対策
・キャッシュフロー設計
・借入承継設計
が複雑に絡み合っていたのです。これは、税理士だけでも、銀行だけでも、不動産会社だけでも解決できません。
不動産30ヵ所をどう承継するか
Uさんの最大の悩みは、「自分の相続をどう用意するか」「妻には老後の不安がないようにしたい」「2人の子どもたちがもめないようにしたい」ということなど、多岐に渡ります。
不動産だけでも30以上あれば、
・収益性の高い物件
・築古で今後修繕が必要な物件
・相続税評価は低いが収益は安定している物件
単純に“均等分割”はできません。しかし、長男にすべて集中させれば、他の子に不満が出る可能性もある。さらに借入2.2億円。承継は資産だけではありません。負債も含めた承継です。
相続は、経営の延長線上にある
出向先企業の株価を20倍にしたUさんは経営のプロです。しかし相続は、企業経営より難しい。なぜなら、合理性だけでは決められないからです。
企業は利益が基準。
家族は感情が基準。
ここを読み違えると、“争族”になります。
私たちが最初に伝えたこと
「今日は何も決めなくて大丈夫です」これが最初の言葉でした。相続は商品ではありません。投資判断でもありません。家族の未来設計です。設計図がなければ、どんなスキームも危険です。
Uさんは帰り際、こう言われました。
「もっと早く相談すればよかった」
しかし私はこう答えました。
「10年間考え続けたからこそ、今日ここに来られたのです」
焦っていたら、税金対策だけになっていたでしょう。しかし今は違います。
・家族の状況
・子どもの意思
・ご自身の老後観
・資産規模
・借入構造
すべてが見えている。だから今が“熟したタイミング”なのです。
富裕層の相続は「縮小」ではなく「再設計」
多くの方は、相続を“減らす作業”と考えます。しかしUさんのケースは違います。
・資産7億円超
・不動産30ヵ所
・借入2.2億円
・収益は安定
これは縮小ではなく、再設計です。どう引き継げば、次世代が困らないか。どうすれば、資産が守られるか。どうすれば、家族が揉めないか。
能力不足ではありません。情報不足でもありません。問題は全体設計がなかったこと。
銀行は融資視点。
税理士は税額視点。
不動産会社は建築視点。
しかし、誰も「全体」を見ていなかった。だから動けなかったのです。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
