生前に父が「500万円のお墓」を契約も、“代金未払い”のまま逝去――「借金はすべて控除できる」は大間違い…債務控除の対象になるもの・ならないものの“線引き”【税理士が解説】

生前に父が「500万円のお墓」を契約も、“代金未払い”のまま逝去――「借金はすべて控除できる」は大間違い…債務控除の対象になるもの・ならないものの“線引き”【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続が発生すると、故人の財産だけでなく、借金や未払い費用といった「債務」も相続人が引き継ぐことになります。ただし、相続税の計算では、これらの債務は原則として「債務控除」として差し引くことが認められており、税額を左右する重要な要素です。しかし、すべての債務が控除できるわけではなく、相続の取得形態や相続人の居住地、債務の性質によっては控除が認められず、結果として相続税の負担が増えてしまうケースも……。そこで本記事では、この「債務控除」の基本と例外、判断のポイントを整理します。 

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債務控除の可否を分ける「確実性」

吉田課長「下記4.(1)に『債務は、確実と認められるものに限る』と書かれていますが、これは具体的にどういうことですか?」

 

4.確実と認められる債務

(1)規定(相続税法14条1項)

1~3の規定により、その金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。

 

(2)通達(相続税法基本通達14-1) 

債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面による証拠を必要としない。

 

なお、債務の金額が確定していない場合であっても、その債務の存在が確実と認められるときは、相続開始時点の状況に照らし、確実と認められる範囲の金額だけを控除する。

 

上記(1)は法律の規定で、(2)は国税庁の通達です。この通達は、「債務について契約書が作成されていない場合でも、実際にお金の貸し借りがあったと認められるのであれば、その債務の存在を否定しない」ということを意味しています。

 

その根拠は、民法587条にあります。同条は、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質および数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」と規定しており、契約書の作成を要件としていません。

 

ただし、2020(令和2)年4月1日から施行されている民法587条の2第1項には、「前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質および数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる」とあります。

 

この規定は、金銭消費貸借契約書を作成する場合に、金銭の授受が単なる金銭の受け渡しではなく、消費貸借契約に基づくものであることを文書上も明確に位置づける趣旨で設けられたものです。

 

とはいえ、いずれの契約形式であっても、相続税では、債務として確実に存在すると認められるものに限り、債務控除が認められます。

 

なお、債務控除の適用を巡っては、多くの裁判事例や国税不服審判所の裁決事例があります。代表的なものとしては、連帯保証債務、保証債務、定期借地権の預り保証金などが争点となりました。

相続時に控除できる「税金」の範囲は…

吉田課長「公租公課も債務控除の対象になると聞きました。公訴公課とはなんですか?」

 

相続税法では定義が置かれていませんが、一般的に「公租公課」とは、国や地方公共団体が法律や条例に基づいて強制的に徴収するものをいいます。具体的には、下記5.(1)(2)が公租公課に該当します。

 

5.債務控除が認められる公租公課の額(相続税法14条2項)

次の(1)(2)の公租公課が該当する。

 

(1)被相続人の死亡時、債務が確定しているものの金額

(2)被相続人に係る所得税、相続税、贈与税、地価税、再評価税、登録免許税、自動車重量税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、石油石炭税および印紙税その他の公租公課の額など

 

いずれも、被相続人の死亡日に債務が確定していないと、債務控除として認められません。

 

 

多田 雄司

税理士

 

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