(※写真はイメージです/PIXTA)

「タワマン節税裁判」と呼ばれた2022年の最高裁判決は、富裕層の相続税実務に決定的な転機をもたらしました。判決から3年が経ち、そのあいだの制度改革により「タワマン節税」はほぼ封じられたといえます。本記事では、その裁判内容を振り返るとともに、評価通達の歪んだ構造と相続税実務の現在地についてみていきましょう。

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問題の本質は「通達評価」と「時価」の乖離

今回の最高裁判決の背景にある根本的な問題は、評価通達そのものが時価を十分に反映できていない点にあります。

 

「タワーマンションでは通達評価額が極端に低く算定される」「実勢価格との乖離が大きくなる」という現象が顕著であり、これがいわゆる「タワマン節税」を生み出していたわけです。

 

したがって、本来見直すべきは通達評価そのものであり、評価通達6はその乖離の補正するための暫定的な手段に過ぎません。

 

ここ1~2年で進んだ「タワマン評価」の制度改革

こうした背景を受け、国税庁は令和5(2023)年10月6日に「居住用区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」を公表。令和6(2024)年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用が開始されました。

 

昨年から今年にかけて、この新ルールは実務に広く浸透し、タワマンの評価額は実勢価格に近づきつつあります。

 

その結果、極端な評価圧縮は困難となり、相続直前にタワマンを購入して節税を図る「タワマン節税」は、事実上封じられたといっていいでしょう。評価通達6を積極的に利用する必要性も減り、制度の透明性と公平性はようやく改善の方向へと進み始めています。

 

タワマンをめぐる税務の景色は、ここ数年で大きく変わりました。今後は、通達評価そのものの精緻化を進め、実勢価格を反映したより公平な評価制度の完成が期待されます。

 

 

八ツ尾 順一

大阪学院大学 教授

 

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