(※写真はイメージです/PIXTA)

「天皇の財産はすべて非課税なのではないか」というイメージを持つ方も少なくないでしょう。しかし実際には、相続税が課された財産と、非課税とされた財産が明確に区分されています。1989年(平成元)1月7日に崩御された昭和天皇(裕仁天皇)の財産には、相続税がどのように適用されたのでしょうか。本稿では、2025年12月に『富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】』を刊行した八ツ尾順一氏が、特別な地位にある人物に対する相続税の仕組みと、その法的根拠をわかりやすく整理します。

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天皇の財産のうち、「公的財産」と「文化財」は相続税の対象外

天皇の財産は法律上、次の3つに区分されます。

 

(1)私的財産

……天皇個人が私的に所有する現金、有価証券、不動産など。

 

(2)公的財産(皇室用財産)

……皇室の活動や儀礼に用いられる財産。皇居、御用邸、儀礼用の物品など。

 

(3)文化財

……重要文化財や国宝に指定された、歴史的・文化的価値の高い財産。

 

このうち、相続税の課税対象となるのは(1)の私的財産のみです。(2)の公的財産については、皇室経済法により国家が所有する「国有財産」と位置づけられていることから、相続税の課税対象外です。

 

皇居・赤坂御所・各地の御用邸といった皇室施設、また皇室儀礼で使用される装束や調度品などの物品は、いずれも天皇個人の所有物ではなく国有財産とされているため、相続の対象にはなりません。

 

実際、日本国憲法88条には、次のように定められています。

 

「皇室に属するすべての財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」

 

この規定により、皇室財産の管理・支出は厳格に国家の統制下に置かれているのです。

 

「三種の神器」も非課税

さらに、相続税法12条(非課税財産)および皇室経済法7条は、皇位とともに継承される「由緒ある物」について、相続税・贈与税の対象外とする旨を定めています。

 

この「由緒ある物」には、次のようなものが含まれます。

 

■三種の神器

・八咫鏡(やたのかがみ)

・草薙剣(くさなぎのつるぎ)

・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 

■宮中三殿

賢所、皇霊殿、神殿

 

これらは、皇位の象徴として代々継承される宗教的・歴史的財産であり、個人財産ではなく皇位に付随する国的財産として扱われています。

 

(3)の文化財についても、文化財保護法の趣旨を踏まえ、社会的公共性がきわめて高い財産として、相続税の課税対象外とされます。国宝や重要文化財に指定されている物品が、相続税の負担によって散逸することを防ぐための制度的配慮です。

 

次ページ昭和天皇崩御時にかかった「相続税額」は…
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