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国外居住を利用した贈与スキーム
問題となったのは、武富士創業者の長男が、両親からオランダ法人の株式の贈与を受けた取引です。長男は当時、香港法人の代表者として出国し、香港に居住していました。
当時の税法では、「国外居住者」に対する「国外財産」の贈与については、日本の贈与税の課税対象外とされていました。そのため、長男は贈与税の申告を行いませんでした。
この制度を前提にすれば、
① 受贈者が国外居住者であり
② 贈与の対象が国外財産である
という要件を満たす限り、日本の贈与税は課されません。こうした法制度の枠組みを利用したスキームが、本件で用いられたのです。
課税のために問われた2つの論点
このケースで課税庁が長男に贈与税を課すためには、次のいずれかを立証する必要がありました。
1つは、長男が国外居住者であることを否認することです。もう1つは、贈与されたオランダ法人の株式を国内財産と認定することです。
東京国税局は前者の立場を採り、「香港居住は租税回避を目的とした形式的なものであり、実質的な生活の本拠は日本にある」として、約1,300億円に及ぶ追徴課税を行いました。
