保険料が「会社負担」の保険金は、相続税がかかる〈死亡保険金〉か非課税の〈実質退職金〉か…相続人VS税務署が争った結末は【税理士が解説】

保険料が「会社負担」の保険金は、相続税がかかる〈死亡保険金〉か非課税の〈実質退職金〉か…相続人VS税務署が争った結末は【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

身近な人を亡くしたとき、思いがけず相続税がかかることがあります。「故人が持っていた財産」だけでなく、「みなし相続財産」として扱われる財産があるからです。今回はその「みなし相続財産」のなかでも「死亡退職金」に焦点をあて、相続税の対象になる条件や非課税になる特例、保険料の負担者と受取人によって変わる課税区分などについてみていきましょう。実際の裁決事例や法令にもとづき、多田雄司税理士が解説します。

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業務上の死亡であると認められなかった事例

ある乳業会社A社の専務取締役Bさんが業界会議に出席中に死亡し、A社はBさんに対して弔慰金2,800万円と死亡退職金2,700万円を支給しました。

 

ところが、税務署長は「弔慰金として支払われた2,800万円は、実質的には死亡退職金だ」として否認したのです。

 

吉田課長「審判所はどのように判断したのでしょうか?」

 

弔慰金の存在は認めるも、「業務上の死亡」にはあたらず

A社の「役員退任慰労金の支給基準」に「弔慰金を含む」と記載されていたことから、審判所は弔慰金の存在自体は認めました。

 

しかし、Bさんの死因は、脳出血による病死でした。会議中に特別強い精神的緊張があったとはいえず、会議への出席が直接の死因とは認められないと判断されました。さらに、長年の業務による負担の蓄積も認められず、審判所は「業務上の死亡には当たらない」と結論づけました。

 

これにより、弔慰金が非課税になるのは先述のように「給料の半年分まで」となり、半年分を超える部分は「死亡退職金」として課税対象となりました。

 

また、A社はBさんのために社葬を行いました。税務署長は「社葬費用も弔慰金に含まれる」と主張しましたが、審判所はこれを否定しました。「社葬は会社の対外的な儀礼であり、遺族への給付である弔慰金とは性質が異なるため、社葬費用を相続財産に加える必要はない」と判断したのです。

 

この事例は「業務上の死亡かどうかの判断基準」と「社葬費用の扱い」が整理されている点で、実務上の参考になります。このように、弔慰金が非課税になるかどうかは、死因や支給の性質を細かく見て判断されます。

「死亡退職金」の非課税枠

吉田課長「死亡退職金の非課税枠について教えてください」

 

以下に示すとおり、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。

 

3.死亡退職金の非課税枠(相続税法12条)

相続人が受け取った死亡退職金は、以下の式で算出された金額までが非課税となる。ただし、この非課税の適用は「相続人」に限られる。

 

(注) 養子がいる場合、以下のように人数を制限して数える(相続税法15条2項)

・被相続人に実子がいる、あるいは実子はいないが、養子が1人いる……1人

・被相続人に実子がおらず、かつ養子が2人以上いる場合……2人

 

なお、相続放棄があった場合でも、放棄がなかったものとして人数を計算する。

 

ただし、みなし相続財産である死亡保険金と同様、この非課税枠は「相続人」に限られる点に注意が必要です。

 

 

多田 雄司

税理士

 

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