保険料が「会社負担」の保険金は、相続税がかかる〈死亡保険金〉か非課税の〈実質退職金〉か…相続人VS税務署が争った結末は【税理士が解説】

保険料が「会社負担」の保険金は、相続税がかかる〈死亡保険金〉か非課税の〈実質退職金〉か…相続人VS税務署が争った結末は【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

身近な人を亡くしたとき、思いがけず相続税がかかることがあります。「故人が持っていた財産」だけでなく、「みなし相続財産」として扱われる財産があるからです。今回はその「みなし相続財産」のなかでも「死亡退職金」に焦点をあて、相続税の対象になる条件や非課税になる特例、保険料の負担者と受取人によって変わる課税区分などについてみていきましょう。実際の裁決事例や法令にもとづき、多田雄司税理士が解説します。

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保険料が「会社負担」の保険金に相続税はかかるか?

Aさんの勤務先B社は、C生命と以下の内容で「団体定期保険契約」を締結しました。そしてAさん死亡後、保険金受取人(請求人)である相続人Dさんが保険金を受け取りました。

 

・契約者……B社およびC生命

・保険料負担者……B社

・被保険者……Aさん(被相続人)

・保険金受取人(請求人)……Dさん(相続人)

 

吉田課長「この保険金について、Dさんと税務署はそれぞれはどのように解釈したんですか?」

 

Dさんは、「これは退職金であり、なおかつ非課税の弔慰金にあたる」と考え、相続税申告書には記載しませんでした。

 

ところが税務署長は、「この保険金は『死亡保険金』に該当するから相続税の対象になる」と判断し、申告内容を更正(職権による増額修正)したのです。

 

これに対し、Dさんが「納得できない」として審判所に不服申立てを行ったというのが本件です。

 

吉田課長「審判所はどのように判断したのでしょうか?」

 

審判所はまず、当時B社に以下の社内規程があったことを確認しました。

 

(1)退職金に関する規程

(2)弔慰金(職員の遺族へのお見舞い金)に関する規程

(3)団体定期保険に関する規程

 

審判所は、Dさんが(1)(2)に基づいて退職金と弔慰金を受け取り、さらに(3)に基づいて保険金を取得したとしました。

 

しかし、この保険金を「退職金」や「弔慰金」とする根拠は、(1)(2)の規程やB社の就業規則、労働組合との取り決めなどには書かれていませんでした。

 

吉田課長「なるほど……結局、審判所はどのように結論づけたのでしょうか?」

 

審判所は、この保険金を「退職金」と「弔慰金」に分けて考えました。

 

●退職金について

まず退職金について要約すると、次のような判断をしました。

 

「亡くなった社員の家族が生命保険で直接受け取るお金は、会社のルール(社内規程や就業規則、労働組合との取り決めなど)に『退職金として支給する』と明確に書かれている場合に限り、退職金に該当する。単に会社が保険料を負担していたからといって、一方的に退職金とするとは規定していない」

 

つまり、会社のルールに明記されていない以上、この保険金は退職金とはいえない、という判断です。

 

●弔慰金について

次に弔慰金についても要約すると、次のような判断をしました。

 

「B社は契約者であるが保険料を負担しただけであって、この保険金を受け取る権利は持っていない。受け取る権利があるのは、あくまで保険金受取人であるDさんである。したがって、この保険金は「死亡退職金」にも「弔慰金」にも当たらない。また、通達でいう『実質上被相続人の退職手当金等にも当たらない

 

結論は、税務署長が主張したみなし相続財産である死亡保険金に当たるということです。

 

この事例からわかるのは、会社が保険料を支払っていたとしても、社内規程などに「退職金や弔慰金として支給する」と明記されていなければ、税務上は単なる死亡保険金として扱われるということです。

 

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