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壮絶な命と向き合い、芽生えた「医師としての自覚」
研修医はまだ給料を十分にもらえる身分ではないため、週に1度ほかの救急病院にアルバイトをしに行っていた。研修先の病院を18時に出て、車でアルバイト先に向かい、20時から翌朝7時まで仮眠をとりながら救急患者の診療をして、その後はまた研修先に車で戻って通常診療をする。
SLEの治療に関する最新の知見を得ようと、自分で交通費や参加費を出して学会に参加したり、論文投稿料を自腹で払って医学雑誌に論文を投稿したり、できることはなんでもした。
週に1回のアルバイトもして生活費の足しにしていたとはいえ、それでも「どうしても彼女を救うんだ」という一心が筆者をさらに勉強させたし、その後SLEに関する論文を世に多く出すきっかけにもなった。字面だけを読むと非常に過酷な日々を過ごしていたように見えるが、それでも筆者はこの患者を助けたかったし、そのために自分にできることがあればなんでもした。
残念ながら、数カ月間の壮絶な闘病の末に彼女はこの世を去ったが、医師になりたての早い時期に医師としての覚悟を持てたのは彼女のおかげである。研修医1年目にこうした壮絶な命と向き合うことを知ったが故に、筆者の次があったといえる。夕方5時で家に帰宅させるような現在の働き方改革が本当に正しいのか、別の方法もあるのではないかと思う。
当時はまだ研修医という立場だったが、大学を卒業した1年目の医師であっても普通に医師と呼ばれていた。今と違って初期研修医制度というようなものはなく、国家試験が通れば医師である。医師として矜持を持って働く。だから医師としての自覚も早く芽生えたのだと思う。
ちなみに、現在は法律で医師免許を取得したあと、2年間の初期研修が義務づけられているので、大学を卒業して2年経ってやっと医師としての使命感を持つことができる。したがって、医師の自覚のないままに全国各地の病院で医療に携わっている初期研修医も多いのではないかと危惧している。初期研修医といえども医師であるからには一定の責任を持たさないといつまでも甘えることになる。責任を持つことで一流になれる。
