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病気の原因や、より良い治療方法を徹底的に追究すべし
基礎研究・臨床研究・先端医療・再生医療のすべてに共通していえることは、医師たる者は、なぜこの病気が起こるのか、もっと良い治療法がないかを徹底的に考えるべきであるということだ。
病気が起こる原因や理由については、動物実験など基礎研究を通してぜひとも病態生理を研究してほしい。動物実験などで病気が発病して進行するメカニズムを調べるのである。臨床でも良い治療法については、いかに手術の時間をもっと短くできるか、出血量を少なくできるか、患者の負担を軽減できるか、成功率を上げられるか、治療成績を良くできるかといったことを常に頭におきながら目の前の患者に接してほしいということである。
料理にたとえるなら、レシピには塩小さじ1杯、醤油大さじ1杯などと調味料の分量が書いてあり、おいしく作ろうと思えばこそ、その量を守って調理する人が多いと思う。医療でもあらゆる疾患に対して診療ガイドラインが作成されていて、それぞれのガイドラインにはいわゆる標準治療が定められている。医師はガイドラインの記述に従って、薬剤を投与する順番や治療法を決めるのである。医師であればその標準治療は知っているべきであり、まずはそれを実践しなければならない。
しかし、それだけではプロの医師とはいえない。プロの料理人ならば、それぞれの料理の基本レシピはあっても、必ずしもレシピどおりに調理をするわけではない。その日の気温や湿度、お客さんの好みや体調を考えながらひと手間かけたりひと工夫したりしているはずだ。医師もそれと同じで、何も考えずに診療ガイドラインの標準治療をするようではまだまだである。
標準治療に基づきながらも、目の前にいる患者がなぜこの病気になったのか、病気の病態生理や本質を考え、もっと良い治療法がないかどうかを模索しながら日々の診療に向き合うことが大切なのである。
何よりも、この患者さんがどういう人なのかを知ることである。どんな仕事をしてきたのか、何をしたいのか、どんな家族なのか、こうした背景で治療法は変わる。変えてあげなければならない。それはガイドラインに書けない。筆者は腎透析の領域や循環器血管外科領域でガイドラインを書いていた張本人である。
もし、この病気にはこのアプローチよりもあのアプローチをしたほうがよい、ガイドラインにはAという治療法が書いてあるが、この患者にはBという治療法のほうが合いそうだ、と考えた場合は上司や先輩に相談すればいい。または、倫理委員会(IRB:Institutional Review Board)にかけて倫理的に問題がないか審査してもらう方法もある。
診療ガイドラインに定められた標準治療以外の治療や、これまでにない新しい治療を行う場合は、法律上は問題がなくとも、倫理的に問題がある場合も少なくない。そのため、必ず倫理委員会に諮(はか)って倫理的な観点から審査してもらう必要があるのだ。小さい病院であればほかの病院の委員会にかければいい。
現状では保険診療と保険外診療の混合診療は認められていない。この2種類の治療を一度に行う場合は、保険診療の部分も保険外診療となり、治療費が全額病院の持ち出しになるので審査が必要となる。混合診療が認められていないがゆえに、病院の経営を圧迫することにはなるが、それが医学の進歩につながる可能性もある。だから担当医がどうしてもやりたいという場合は、病院側に審査をしてもらい、承認が得られたらやる。
病院とは「意義」のあることをしようとすればするほど利益を圧迫する。難病治療や高度な医療をすればするほど利益率はどうやっても低くなるのだ。
