クレジットカードやQRコード決済といった「キャッシュレス決済」が当たり前になり、ここ数年は「出かけるときはスマホしか持たない」という人も多いだろう。この30年間で、デジタル化の波とともに貨幣経済は大きく姿を変えた。しかしその一方で、現金が排除されることで生じている深刻な不利益も見過ごせない。本記事では、ジェイ・L・ザゴースキー氏の著書『ザ・パワー・オブ・キャッシュ デジタル経済にこそ跳ね上がる現金の価値』(プレジデント社)より、キャッシュレス化の陰で見落とされてきた「現金の価値」とその必要性について紐解く。
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「キャッシュレス化」の陰で見過ごされている“負の側面”
30年前は、ほとんどの人が現金を使っていた。今では、世界中で現金から、クレジットカードやQRコード決済、個人間送金アプリ、暗号資産(仮想通貨、暗号通貨とも)などさまざまな電子決済(現金ではなく電子データの送受信によって決済を行う方法)へと軸足を移している。ほとんどの若者は、現金を持ち歩くことさえない。
この動きを素晴らしいトレンドだと歓迎する声は多いが、デジタル化の陰で見過ごされてきた負の側面もある。
現金が排除される中、私たちはさまざまな形で不利益を被っているのである。つい使い過ぎてしまったり、プライバシーが損なわれたり、物価上昇につながったり、といった具合だ。
特に、低所得層にとっては、割に合わない銀行サービス手数料を負担させられるなど大きな影響がある。また、サイバー攻撃や自然災害に脆弱になるという点で、国家安全保障を揺るがす恐れもある。犯罪者は世界中のどこからでも私たちを標的にできることから、犯罪の増加にもつながる。
デジタル化の未来はユートピアか?
テクノロジーの専門家が、デジタル化の未来はユートピアだと語る姿を数え切れないほど見聞きしているが、こうした専門家は技術の問題点を把握できていない。
ひとたび現金やATM、キャッシュレジスターがこの世から姿を消せば、その復元には膨大な費用がかかる。現金は欠くことのできないツールである。現金を使い続ければ、長い目で見て私たちのメリットにつながる。
米ボストン大学大学院
特任准教授
米ボストン大学大学院(市場・公共政策・法律)の特任准教授。査読付き学術誌で数々の論文を発表しているほか、『ワシントン・ポスト』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューズウィーク』『クォーツ』『サロン』など一般向けメディアでも精力的に寄稿している。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載キャッシュレス化が進む現代で、あえて富裕層が「現金」を使うワケ
翻訳家・ライター
山梨県生まれ。早稲田大学卒業。
主な訳書に『1日1つ、なしとげる!』『イーロン・マスク 未来を創る男』
『SMARTCUTS』『ビッグデータの正体』『地球上の中華料理店をめぐる冒険』
『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』(以上、講談社)、
『小売の未来』『小売再生』『センスメイキング』『Tools and Weapons テクノロジーの暴走を止めるのは誰か』『イノセントマン ビリージョエル100時間インタヴューズ』
『心眼』(以上、プレジデント社)、
『データ資本主義』(NTT出版)、『締め切りを作れ。それも早いほどいい。』(パンローリング)、『マスタースイッチ』(飛鳥新社)などがある。
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