「もう連絡してこないで」——娘から届いた拒絶のサイン
「最初は、通信障害かと思いました」
そう語るのは、千葉県郊外に暮らす元会社員の佐藤正弘さん(仮名・71歳)です。妻の和子さん(仮名・69歳)と、築40年を超える戸建て住宅で二人暮らしをしています。
ある日、いつものように娘に電話をかけようとしたところ、呼び出し音が鳴りませんでした。LINEを送っても既読がつかない。不安に思って何度か試した末、画面に表示されたのは「このユーザーは通話を受信できません」という表示でした。
「和子に『ブロックされてるかもしれない』と言われたとき、冗談だろうと思いました。でも……現実でした」
後日、別の番号からかけた際に、娘から短いメッセージが届きます。
「もう連絡してこないで。今は距離を置きたい」
それが、娘からの最後の言葉でした。
佐藤さん夫婦の年金収入は、二人合わせて月18万円ほど。正弘さんは厚生年金、和子さんは国民年金です。住宅ローンはすでに完済しており、「暮らしていけない」水準ではありません。
「贅沢はできませんけど、食べていけないわけじゃない。正直、自分たちが“子どもに嫌がられる側”になるなんて、思ってもみませんでした」
ただ、現実の生活は数字ほど単純ではありません。築40年の家はあちこちにガタが来ており、給湯器や屋根の修繕、固定資産税も継続的にかかります。さらに、和子さんは数年前から膝を痛め、買い物や通院が負担になっていました。
「娘に頼ったのは、お金じゃないんです。『今日、病院付き添ってくれない?』とか、『ちょっと顔を見たい』とか……」
最初は月に1回程度だった連絡が、次第に増えていったといいます。
