贈与と預金通帳の保存
たとえば、相続開始(死亡)の4年前に、お父様が吉田課長に300万円を贈与したとします。
吉田課長「タンス預金から出さない限り、預金通帳から引き出しますね」
多額のお金を贈与する場合は、通常は預金通帳から支出します。贈与税は、贈与した金額が贈与税の基礎控除額である110万円(租税特別措置法70条の2の4)を超えると、超えた金額に贈与税が課税されます。
また、死亡した被相続人から相続人等(相続人や遺言による受遺者)に相続の開始前7年以内に贈与があった場合には、その財産は相続税の課税対象になります(相続税法19条)。
吉田課長「そうすると預金通帳を保存する期間は?」
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過去7年間の預金通帳は廃棄しないで、保存しておくのがいいと思います。
ネットバンクの場合
吉田課長「最近は、ネットバンクに預けている人が多くなっていますね」
ネットバンクは、店舗や自社のATM(自動現金預け払い機)を持たないで、インターネットを通して、金融サービスを提供する金融機関のことです。お金の出し入れは、提携している銀行やコンビニエンスストアなどのATMで行います。
吉田課長「通帳を発行しないのですね」
キャッシュカードも発行していない場合もあります。取引履歴の照会は、主にパソコン、スマートフォンのアプリやWebアプリを通して行います。したがって、預金通帳の動きを定期的にデータを保管しておくのがいいでしょう。
吉田課長「父の年代ではネットバンクに預けている人は少ないと思いますが?」
そうですね。しかし、現時点(2025年)で60歳代の人でネットバンクを利用している人がいると思います。ネットバンクの利用者は増えても減ることはありません。
20年後は預金をネットバンクに預ける人が多数になっているのではないでしょうか。
土地・家屋の確認方法
吉田課長「ところで、図表では、財産を確認するための資料が示されていますね」
預金は、日常使っている銀行などについては見落とすことはないと思います。問題は、休眠預金の状態になっているものです。金融機関からの郵便物が残されているか否かなどいろいろな角度から見落としがないかを検討します。
吉田課長「土地、家屋(建物)は、だいたい把握しているつもりですが」
土地、家屋(建物)は重要な財産なので、子供の立場でも知っている人がほとんどだと思います。相続税の申告にあたっては、登記簿謄本で確認します。
相続税対策を考える場合は、登記簿謄本をとらなくても、簡易的に市区町村から送られてくる固定資産税(都市計画税)の課税明細書で確認することができます。
ただし、固定資産税が課税されない土地、家屋(建物)は、課税明細書に記載されません。この場合は、不動産が所在する市区町村から名寄帳を取得することにより確認することができます。土地、家屋(建物)の所有者本人、所有者が亡くなった場合の相続人などが請求することができます。
なお、相続人は、土地、家屋(建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をしなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科されます(同法164条)。
吉田課長「借地権というのは?」
地主から地代を支払って土地を借りて、その土地の上に家屋(建物)を建築する権利のことです。借地権は、賃貸借契約によるのがほとんどです。つまり、土地のように登記はしませんが、土地に準ずる価値があります。
したがって、借地権は土地を借りている人にとっての財産になります。
