「エリア別価格指数」の算出
「エリア別価格指数」(年次)の算出結果
(1)「エリア別価格指数」(年次)の算出結果
(図表-9)に、東京23区の「エリア別価格指数(年次)」の算出結果を示した。同指数は、東京23区を、居住世帯等の特徴が異なる4つのエリア(都心10・南西部11・北部12・東部13)に分類したサブインデックスである。
2024年の価格指数(2005年=100)は、都心が「310.8」(前期比+29%)、南西部が「218.6」(同11%)、東部が「221.4」(同+15%)、北部が「208.8」(同+9%)となり、都心が最大の上昇率を記録した。
リクルート「2024年首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、「住まいの購入理由」として、「子どもや家族のため、家を持ちたいと思ったから(36.1%)」(前年比±0ppt)との回答が最多く、次いで、「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから(34.7%)」(同±2.7ppt)との回答が多かった。新築マンション購入時に、資産性を重視する傾向が強まっており、都心のマンション価格を押し上げた要因の1つと考えられる。
また、都心のマンションは、外国人の購入意欲も高い。日本不動産研究所「国際不動産価格賃料指数」(2024年10月時点)によれば、東京(港区元麻布)のハイエンドクラスのマンション価格を「100.0」とした場合、香港は「258.7」、ロンドンは「206.3」、ニューヨークは「140.8」、シンガポール「138.6」となっている。東京の住宅価格は、世界の主要都市と比べると円安の影響などもあり、低い水準にある。こうした状況のなか、港区の一部地域(青山・麻布・赤坂)は資産性に加えて、大使館や主要外資系企業の通勤アクセスが良好であるため、特に高い人気を集めている14。
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10 都心:「千代田区」・「中央区」・「港区」・「渋谷区」・「新宿区」・「文京区」
11 南西部:「品川区」・「目黒区」・「大田区」・「世田谷区」・「杉並区」・「中野区」
12 北部:「北区」・「板橋区」・「練馬区」・「豊島区」
13 東部:「江戸川区」・「江東区」・「台東区」・「墨田区」・「荒川区」・「足立区」・「葛飾区」
14 日本経済新聞電子版「気がつけば「2億ション」 東京都心100平米未満も」(2024年12月2日)
(2)「エリア別価格指数」(半期)の算出結果
続いて、図表-10,11に、「エリア別価格指数」の半期毎の算出結果を示した。2024年下期の価格指数(2005年上期=100)は、都心「334.0」>東部「226.8」>南西部「224.4」>北部「214.6」となった。
2024年の上昇率を上期と下期に分けて確認すると、都心(上期13%/下期16%)は下期にかけて上昇率が拡大した一方、南西部(上期8%/下期3%)は下期に上昇率が縮小し、北部(上期5%/下期▲1%)と東部(上期11%/下期▲1%」は下期に下落に転じる結果となった。
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」によれば、分譲集合住宅に住み替えた世帯に、住宅選びの際に妥協した点を質問したところ、「価格(予定より高くなった)」(46%)との回答が最も多く、約5割を占めた。
また、スタイルアクト「マンション購入に関する意識調査」(2025年2月時点)によれば、東京23区でマンション購入を検討している層に、現在のマンション価格に関する認識を質問したところ、「購入をためらうほど高い」(57%)との回答が最も多く、次いで「購入を諦めるほど高い」(27%)が多かった。
東京カンテイの調査によれば、2023年の新築マンション価格の年収倍率15は、東京都では約18倍に達した。マンション購入の実需層が、価格高騰に追随することが難しくなり、投資目的での購入を多く含む「都心」を除き、周辺エリアでは価格上昇が頭打ちとなった可能性が考えられる。
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15 マンション価格(70m2換算)を平均年収で除し、新築価格が年収の何倍に相当するかを算出したもの。
3.「タワーマンション価格指数」の算出
(1)「タワーマンション価格指数」(年次)の算出結果
不動産経済研究所「超高層マンション動向」によれば、東京23区におけるタワーマンションの完成予定戸数は減少傾向で推移しており、2016年以降、1万戸を下回っている。2024年は約5千戸と、直近のピークである2015年(約1万戸)の5割の水準に留まっている(図表-13)。
一方、前述の通り、資産性を重視する傾向が強まるなか、実需層に加えて、タワーマンションの資産性に着目した購入のほか16、海外の個人富裕層による購入事例も多い17。価格上昇が継続するなかでも、タワーマンションの購入意欲は強い模様だ18。
こうした良好な需給環境を背景に、「タワーマンション価格指数」は2005年対比で約3.1倍の水準に達している。
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16 LIFULL HOME'S不動産査定「タワマン売却に関する意識調査」(2024年)によれば、売却したタワーマンションの「購入の決め手」について、「最寄り駅までの時間」(53%)、「生活の利便性の良さ」(49%)に次いで、「資産性の高さ」(47%)との回答が多かった。
17 マンションリサーチ株式会社が東京都中央区月島・晴海・勝どきの湾岸エリアタワーマンションの所有権移転(2023年7月~2024年6月)について調査したところ、所有者の約3割が外国人であった。
18 スタイルアクト「マンション購入に関する意識調査」(2025年2月時点)によれば、東京23区のタワーマンション購入を検討している割合は、72.2%(「予算が合えば検討する」(44.4%)と「積極的に検討している(購入した)(27.8%)の合計」であった。
(2)「タワーマンション価格指数」(半期)の算出結果
続いて、(図表-14)に、「タワーマンション価格指数」の半期毎の算出結果を示した。
2024年下期の価格指数(2005年上期=100)は「333.3」となり、過去最高を更新した。2024年の上昇率を上期と下期に分けて確認すると(図表-14)、2024年上期は+19%に達したが下期は+4%となり、価格の上昇スピードが鈍化する結果となった。タワーマンションについても急ピッチでの価格上昇に購入者が追随できず、販売価格と購入希望金額とのギャップが拡大している可能性が考えられる。
また、タワーマンションでは、修繕積立金19や管理費20の上昇がしばしば問題視されている。加えて、実際に居住している区分所有者と、賃貸や投資目的で保有する区分所有者との間で管理に対する価値観が異なること等により、大規模修繕工事等の多額の支出などに向けた合意形成が困難となる可能性が指摘されている21。こうした状況を受けて、神戸市では全国で初めて、有識者会議の提言に基づき、居住実態のないタワーマンションの空室への課税が検討されている22。
今後、投資目的等でタワーマンションを所有することに対して懸念が高まる可能性もあり、引き続き動向を注視したい。
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19 東洋経済オンライン「一気に3倍!「修繕積立費」値上げの怖すぎる事情」(2025年3月12日)
20 朝日新聞「マンション相談が過去最多タワマン管理費値上げで管理会社へ反発も」(2024年10月13日)
21 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社・大和ライフネクスト株式会社「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」
22 共同通信「神戸市、タワマン空室に課税案 導入すれば全国の自治体で初」(2025年1月9日)






